過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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461:にゃんこ[saga]
2012/05/22(火) 18:03:14.83 ID:x6fXrDtV0
私は、話した。
私の思い出した曖昧な記憶の事を。
あの夏休みの日、私達は確かに梓達のライブを観た事。
その後で私達も演奏をした事。
大成功とは言わないまでも、それなりの満足感を持って、
さわちゃん、菫ちゃん、奥田さんを含める皆で一緒にいつもの帰り道を帰っていた事。
そして……、私達の家路の別れ道のあの横断歩道で……、確かに何かが起こった事を。
事件なんだか事故なんだかはまだはっきりしないんだけど、私達はそれで大怪我をしたはずなんだ。
私達の怪我は命に関わるような怪我じゃなかったと思う。
だけど、唯だけは……、違った。
唯は病室に横たわっていて、目も開かずにいくつものチューブやコードに繋がれていて……。
それはまるで、体調を崩して寝込んでいる今の唯みたいな状態で……。
それで、唯も、私も、少しずつ思い出して、気付き始めたんだ。
この世界が本当に夢だとして、この世界が誰の夢で、何のための夢だったのかって。
そう、私達はきっと、傍に居たかったんだ。
始まりはそれだけだったんだ。


「そんな……」


私が唯が自分が死について話した事以外について語り終わると、
梓が動揺した表情を見せて呟き、澪が梓を気遣ってその肩を軽く抱いた。
ムギはただ真剣な表情で唯と私を交互に見ている。


「やっぱり……、この世界は誰かの夢って事でよかったのか?」


澪が梓の肩を抱きながら私に強い視線を向ける。
この世界が誰かの夢だって強く疑ってたのは、和と澪だ。
和が居ない以上、この世界について一番考えられるのは自分だけ。
自分こそが、この世界の真実を考えなきゃいけない。
そういう意志の強さが見える澪の視線だった。
私は気圧されそうな気持ちになりながら、それでも頷いた。


「完全に決まったわけじゃないよ、澪。
まだまだ分かんない事だらけだからな。
でも、多分……、そうだと思う。
私と唯が少しずつ思い出して来た記憶の事もそうなんだけど、そう考えると辻褄が合う事も多いんだよ。
ロンドンの中途半端な気候、日本じゃ見えないはずの南十字星、
あの公園にあるはずなのに無くなってたでかい樹、治らない梓の日焼け、他にも色々……。
この世界は夢……、誰かの思い出のイメージなんだ。
それでその誰かって言うのは……」


「唯ちゃん……なの……?」


ムギが唯の手を取りながら、静かに呟いた。
その声色からは、ムギがどんな感情を持っているのかまでは読み取れなかった。
私はムギの肩に手を置いてから続ける。


「ああ……、そう……だと思う。
この世界が誰かの夢だって決まったわけじゃない。
でも、この世界が誰かの夢だとしたなら、それは間違いなく唯の夢だよ。
色んな状況がそれを示してるし、唯自身も自覚し始めたみたいだった。
それに……」


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