481:にゃんこ[saga]
2012/05/27(日) 18:32:56.71 ID:Don8XXFs0
「……くそっ!」
拳を握り締めて、コンクリートの道路に自分の拳を叩き付ける。
分かってる。
唯を救うためには、そうするのが一番いいんだ。
私以外の誰も傷付かないいい方法だって事はよく分かってる。
でも……、駄目だ……。
それだけは……、絶対に出来ない……。
唯は私のために精一杯ピックを捜してくれた。
澪達も私を信じて、私に勇気をくれた。
皆の想いを……、どうしても裏切れない……。
肝心な所で、私は私の想いを偽れない。裏切れない……!
唯のためだってのに……。
そうしなけりゃ、唯が死んじゃうかもしれないっていうのに……!
だけど、耳に響く言葉がある。
私の言葉より強く響くあいつの言葉がある。
「私に嘘を吐かないでくれよ、律。
嘘を吐かれても分かるし、嘘が分かっちゃうのも悲しいじゃないか」
ロンドンに転移させられる前、夜の屋上で澪に言われた言葉。
嘘なんて吐けない。
あいつの前では吐けない。
勿論、唯の前でだって、ムギの前だって、梓の前だって吐きたくない。
嘘を吐きたくないんだ……!
嘘なんて吐けるかよ、皆の前で……!
少しは吐けたって、吐き続けられるわけないだろ……!
本当にどうしようもない奴だとは自分でも思う。
最善のはずの行動すら出来ない。
本当に役立たずだな、私は……。
皆の足を引っ張ってばっかりだよ……。
だけど、どうしようもなく臆病なおかげで、
弱かったおかげで、どうにか最後の失敗だけはせずに居られたみたいだ。
偽物のピックを持っていく事なんて絶対に出来ない。
私はもう嘘なんて吐けない。
皆の前でも、自分自身の気持ちにも、嘘なんて吐きたくないんだ。
ああ、認めるよ。
私だって本当は和達を見捨てたくなんかなかった。
何としても和達を見つけ出したかった。
一緒に居たかった。
ほうかごガールズのライブをしてやりたかった。
でも、それ以上に残った皆を失うのが怖かったから、自分を誤魔化してたんだ。
皆を守るため、皆と一緒に未来に進むためって言い訳して、
和達の事を必死に思い出さないようにしてたんだ。
そのためにピックを捨てたんだ。
未来に進むためじゃなくて、過去を思い出さないために……。
私はずっとそんな自分を見たくなかった。
弱くて逃げてばっかりの自分を見ていたくなかった。
でも、もうそれは無理だ……。
もう認めようと思う、今度こそ。
私は弱くて、皆の足手纏いだったって事に。
それをどうにか悟られないように自分の心を誤魔化して、
余計に皆に心配を掛けて、結局、嘘を吐いた所で何も変えられなかった。
事態を悪化させただけだったんだよな……。
だから、もう嘘は吐けない。吐かない。
ピックをもし見つけられても、正直な想いを唯に伝える。
今度こそ、なけなしの誤魔化しの勇気じゃなくて、本当の勇気で皆を支える。
そのためには……!
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。