494:にゃんこ[saga]
2012/06/01(金) 18:48:18.89 ID:rzsgqDp00
それはそうだろうと思う。
ムギもそうだけど、特に澪は私の幼馴染みなんだ。
私の嘘も強がりも全部分かっていたはずだ。
分かっていて、送り出してくれたんだ。
勿論、私がどんな選択肢を選ぶのかは分かってなかったはずだと思う。
だけど、あいつは私の選んだ事を全部受け止めるつもりで、
そんな想いを抱いて送り出してくれたはずなんだ。
確証は無いけど、そんな物は必要無かった。
あいつはそういう幼馴染みなんだ。
どんなに情けなくたって私を信じてくれてるんだ。
ムギだって同じ。
ムギも私の事を信じてくれた。
だから、不安でも私を信じて今も待ってくれているんだ。
その信頼を裏切る事なんて、もう絶対に出来ない。
私は梓の頭を軽く掴んで、ホテルの入口の庇に視線を向けさせる。
不思議そうな表情を浮かべつつも、梓は素直に私の動き従ってくれた。
私は頷きながら言葉を続けて、梓に想いを届ける。
「心配、ありがとな。嬉しいよ、梓……。
あそこにさ……、私が唯に渡したい物があるんだ。
何かは言えないんだけど、ちょっと待っててくれないか?
私、もう嘘は吐かないからさ。
正直な気持ちを皆に伝えるようにしたいからさ……、
そのためにも、ほんの少しだけ待っててほしいんだ」
それは私の正直な気持ち。
やっと久々に伝えられた私の本当の想いだった。
だけど、梓は私の言葉には首を振る事で応じた。
「駄目です」
「え……っ?」
「私も一緒にあそこまで登ります。
律先輩を一人きりにするのなんて、もう嫌です。
唯先輩と律先輩の問題ですから、
律先輩が何を捜してるのかは確認しないようにしますけど、
目を瞑ってますけど、あそこまでは絶対に一緒に登らせてもらいますからね」
「いや、でも……」
「律先輩はもう嘘を吐かないんですよね?
だったら、私だって嘘を吐きませんし、吐きたくありません。
私の想いを偽って、譲ったりもしたくありません。
だから……、絶対絶対!
絶対に私も一緒に行きますからね!」
梓の声と表情は真剣そのものだった。
梓がこんな我儘を言うのは滅多に無い事だ。
いや、我儘ってわけでもないけど、こんなに自己主張するなんてな……。
私は正直になる事を決めた。
梓もその私の姿を見て、自分も正直になる事を決めてくれたんだろう。
だったら、私に断る理由なんて一つも無い。
梓が一緒に来てくれるんだったら、例え短い距離でも勇気が湧いて来る。
私は梓の表情を見ながら頷く。
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