過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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495:にゃんこ[saga]
2012/06/01(金) 18:50:04.90 ID:rzsgqDp00
「分かったよ、梓……。
私に私の考えがあるみたいに、おまえにもおまえの考えがあるんだよな……。
よし、じゃあ、一緒に登るぞ?
フロントにおまえが持って来てくれてた脚立があったはずだから、まずはそれを取りに行こう。
その後でブツを回収したら、全速力で唯の所に戻るぞ。
私の正直な想いを……、今度こそ唯に伝えるからさ……。
それじゃ、おまえはこれを持って……」


言いながら、私は余っていたビニール紐の端を渡そうとする。
だけど、それより先に私の手は、強く梓の手に握り締められていた。
強く強く、握り締められていた。
突然の事に驚いて梓の顔をのぞき込んでみたけど、梓の顔は真剣そのものだった。
私を一人きりにしたくないって想いは、本気で強いものだったらしい。
だったら……。

私は握っていたビニール紐の端を離すと、手を開いて梓と指を絡め合った。
梓とは何度か手を繋いだ事はあるけど、指を絡めて握り合った事はほとんど無かった気がする。
梓の体温を感じる。
私だって、梓や皆とは二度と離れたくない。
強く強く、手と手、想いと想いを繋ぎ合う。
フロントに向けて二人で駆け出していく。
もう嘘を吐かず、本当の想いで皆を守っていくために。

走りながら、不意に梓が呟いた。


「そういえば、律先輩……。
澪先輩から律先輩に伝言がありました」


「伝言……?」


「「絶対に戻って来いよ。
戻って来たら、聴かせたい新曲がある」との事です」


新曲……って言うと、完成したのが嬉しくて唯が自分からばらしに来たあれか?
どんな曲かは分からないけど、そんな事はどうでもよかった。
それがどんな曲であろうと、その曲は澪とムギと唯が演奏する曲なんだ。
澪はその三人の内、誰一人欠けさせるつもりも無いって事なんだ。
唯は絶対に救ってみせるって言ってくれてるんだ、澪は。
カッコいい事ばっかりしやがって、まったくあいつは……。
私だって、負けてたまるか……!

だから、私はまた梓の手を強く握った。
握りながら、宣言してやった。


「唯は元気になる……。
絶対に元気にさせてみせる……。
それで唯が元気になって、皆が元気に揃ったらさ……。
私達もほうかごガールズの腕前を澪達に見せてやろうぜ、梓……!」


「……はいっ!」


私の言葉に梓は笑顔になって、強く私の手を握り返してくれた。
梓の体温を感じながら、守ってやる、と私は決心した。
今度こそ守ってやる。
唯も、澪も、ムギも、梓も……。
そして、私自身の想いと過去も……!


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