過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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500:にゃんこ[saga]
2012/06/01(金) 18:54:03.40 ID:rzsgqDp00
「……正直に言うよ、唯。
本当は怖い。すっげー怖い……。
和達の事を思い出すのもそうだし、この先、皆と離れ離れになるかもって事もさ……。
それは唯の夢の世界に来てからって話じゃない。
唯が目覚めなくなるずっと前から、大学に入ってから、それをずっと考えてた。
怖かったんだよ、色んな事が……。
大学までは一緒になれたけどさ、
就職先まで一緒にはなれないだろうし、バンドを続けられるかも分からない。
色んな事が不安だったし、これからも不安は消えないはずだ。

だけど……、それよりも私は唯が元気で居てほしい。
例え夢の世界だけでも、唯には元気で居てほしいんだ。
私達のために死ぬだなんて、言ってほしくないんだ……。

唯に私の存在が負担にならないように、私は強くなる。
強くなってやりたいんだ。
何が起こったって乗り越えられるように……、強く……。
だから、おまえは生きていてくれ、唯!」


情けない決意表明。
自分の弱さを認めるだけの、気恥ずかしい宣言。
でも、それでよかったと思う。
ここまで追い込まれてからだけど、私はやっと素直になれたんだ。
皆の前で、弱さを見せられたんだ。
今はそれだけでも上出来だと思うべきなんだろう。
やっと一歩。
これで私はやっと一歩進めたんだから。

私の言葉を聞いて唯はどう思っただろう。
私の想いの何分の一かでも届いただろうか。
せめて、唯に生きていて欲しいって気持ちだけは届いていてほしい。

不意に、唯が笑った。
久し振りに見る、唯の優しいほんわかとした笑顔……。
その笑顔を浮かべたまま、唯が喋り始める。


「え……へへ……。
嬉しい……なあ……。
皆に迷惑掛けてばっかりなのに……、いつもいつも迷惑掛けてるのに……。
皆が私の事を思ってくれて……、私……、すっごく……嬉しい……。
私……、生きてて……いいのか……な?
皆と一緒に居て……いいの……かな?」


「生きてて下さいよ!
ずっと……、ずっと一緒に居ましょうよ、唯先輩!
皆で……、またセッションしましょうよ!」


梓の悲痛な声が響く。
唯の事を心の底から心配した声色。
唯はその梓に向けて笑顔を向けて言葉を届けて……、


「あり……がと、あず……にゃん……。
私……、私ね……、皆と傍に居られて本当に」


瞬間、私が握っていた唯の手から力が抜ける。
身体中から力が抜けていく。
目を閉じる。
そうして、その唯の続きの言葉を聞く事は出来なくなった。


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