537:にゃんこ[saga]
2012/06/10(日) 18:33:26.13 ID:bX5VV6EK0
同じだ。
梓は私と同じなんだ。
私と同じで、ずっと不安を胸に抱えてたんだ。
自分が何の役にも立ててないって思って、ずっと怖がってたんだ。
私達は本当に似た者同士だったんだ。
自分に自信が持てなくて、誰からも必要とされてないって思えて、私も梓も怖かったんだ。
だから、梓は今泣いてるんだ……。
梓は涙を流し続ける。
身体を傾けて私の身体に顔を寄せ、その小さな手を私の背中に強く回す。
梓の強い震えが私の身体に直接伝わって、梓の心の震えまで感じられるみたいだった。
同時に、私自身の胸の強い痛みを感じる。
「捨てないで……下さい……」
梓が吐き出すような言葉を口にした。
それは梓の不安の全てがこもった言葉。
梓が心の中に抱え続けていた不安の言葉だった。
一度言葉にしてしまった事で止まらなくったのか、
心の枷から解き放たれたかのように、隠されていた言葉を梓が告白し続ける。
「捨てないで下さい……。
見捨てないで……下さい……。
私……、皆さんの役に立ってない事は……、分かってます……。
何の役にも……立ててません。
でも、皆さんの傍に……、傍に居させてほしいんです……。
頑張ります……、ひっく、もっと頑張ります……から……っ!
見捨て……ないで……、
一人に……、しないでよぉ……!」
強く梓に抱き締められる。
抱き締められながら、私は自分を責めてやりたい気分に胸が支配される。
私は……、梓は強い子だって思ってた。
この世界で私達を支えてくれてる梓は強い子なんだって。
いや、そう思いたかっただけなのかもしれない。
自分が梓に何もしてやれてなくて、それが悔しくて、
でも梓は誰の手助けも必要じゃなさそうに強く振る舞っていたから、
それで梓は大丈夫なんだって勝手に思い込もうとしてたんだ。
本当は……、小さなことで傷付く繊細な後輩だって、
涙脆くて寂しがりな後輩なんだって、分かっていたはずなのに……。
「梓……、ごめん……、ごめんな……。
私、何も気付けてやれてなかった。
おまえがそんなに苦しんでる事に、全然気付けてやれてなかった。
元部長なのに……、部長なのに……、何も気付けてなかった。
本当に……ごめん……」
私は自分の無力に悔しさを感じながら、それでもどうにか言葉を絞り出した。
本当に私は無力だ。
伝えたい事を上手く伝えられないばかりか、梓の考えも上手く理解出来てない。
本当に……、何やってんだよ……。
でも、そこで立ち止まるわけにはいかなかった。
私は梓に想いを伝えなきゃいけない。
梓は大切な後輩なんだって。
何の役にも立ててない事なんてない頼れる後輩で、
皆が梓の事を大好きだって思ってるんだって、それだけは絶対に。
私は自分の胸が張り裂けそうになってる事に気付きながらも、それをどうにか言葉にしてみせる。
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