過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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536:にゃんこ[saga]
2012/06/10(日) 18:32:56.15 ID:bX5VV6EK0
「聞いてくれ、梓。
これは私だけじゃなくて、唯も同じ気持ちなんだ。
私達はもうビニール紐とか、包帯とか、
約束……とか……、
そういう物に……、頼るのをやめようって思ったんだよ……。
だからさ、今、唯は部屋で私達を待っててくれてるんだ」


「唯……先輩も……?
どうして……っ? どうしてなんですか……っ?
約束……したじゃないですか……。
『ずっと永遠に一緒だよ』って、歌で……贈ってくれたじゃないですか。
なのに……、なのに……っ!」


梓は声を荒げ始めていた。
トレードマークのツインテールが悲しみで震えているのが分かる。
悲しんで、辛くて、怒ってもいるのかもしれない。
だけど、『永遠に一緒』って言葉は、私達の嘘の無い想いだった。
私は梓と……、皆と永遠に一緒に居たい。
仲間であり続けたい。
でも、それは永遠に一緒に居るって事とは違うんだ。
似てるようで違うんだ、それは。

私はそれを梓に上手く伝えられなかった。
これからも、上手く伝えられないかもしれない。
嫌われる事になるかもしれない。
でも、伝えるんだ、私は。
どんな事になったって、本当の気持ちを伝えるんだって決めたんだから……!


「あず……」


「律先輩……っ!」


梓に声を掛けようと瞬間、不意に大声を出した梓が私に飛び掛かって来た。
あまりの勢いに、私はバランスを崩して、その場に全身で横たわってしまった。
その私の身体の上に梓が乗っていて、俗に言うマウントポジションになっている。
殴り掛かられるのか、って一瞬思ったけど、そうじゃなかった。
雫が私の顔に零れて来て、気付いた。
梓が泣いてるんだって。

梓は大粒の涙を流しながら、
全身を震わせて悲痛な叫びを私に向ける。


「私……、私、何か間違った事、しちゃいましたか……っ?
先輩達に嫌われるような失敗……しちゃったんです……か……?
包帯で私達の手首を繋いだ……から?
ひっく……、それとも……、何の役にも立ててないから……?
この世界に来て……、誰の役にも……立ててないから……ですか……?
役立たず……なのは自分でも分かってます……。
でも……っ!」


えっ、と思った。
梓の事をずっと考えていたはずなのに、間抜けな私はそれに気付けてなかった。
まさか、梓が自分の事を役立たずだと考えているだなんて、想像もしてなかった。
だって、梓は皆を支えててくれたじゃないか。
梓が居たから、私は道を踏み外さずに済んだんだ。
梓が居たから、崖っぷちギリギリで立ち直れたんだ。
それは全部梓が居たおかげなのに、役立たずだなんてどうして……。

と。
不意に私は澪の言葉を思い出した。
「律の元気な姿を見てると、勇気が湧いて来るんだ」って言葉。
「律の元気な姿を見るのは、本当に嬉しかったんだよ」って澪は言ってくれた。
私にその自覚は無かった。自覚が無かったから、不安だった。
でも、それで皆に勇気を分けてあげられてるんだったら、嬉しいと思えたんだ。


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