過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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556:にゃんこ[saga]
2012/06/14(木) 17:50:20.01 ID:wM9rIEft0
梓の言葉と拳が止まる。
涙も止まりこそしなかったけど、少しだけ落ち着いたみたいだった。
一息だけ吐いて、私は梓に正直な想いをもう一度伝える。


「梓。
私はおまえの笑顔が好きなんだ。
私の悪ふざけに苦笑してくれるおまえの笑顔が好きだ。
演奏が終わった後、満足そうに微笑んでくれるおまえの笑顔が好きだ。
部室で見せてくれるおまえの笑顔が大好きだ!
私は……、その笑顔を失くしたくないんだよ……。
今、私達がここで慰め合ったら……、
おまえのそんな笑顔が二度と見れなくなると思うんだよ……」


「私の……笑顔……?
でも、私の笑顔……なんて……」


梓が自信の無い様子で呟く。
当然だ。自分の笑顔に自信がある奴なんてそうは居ないだろう。
そもそも笑顔なんて自分で見えないものなのに、
自分で自信を持てる奴の方がどうかしてると思う。
私は梓の笑顔が大好きだ。
でも、それを上手く言葉に出来る自信は無い。
どんなに伝えようとしたって、情けないけど私なんかの言葉じゃ届けられないと思う。
だから、私はポケットの中に入れていた物を、梓に差し出したんだ。


「これ……は……?」


それを手に取った梓が大きな目を見開いて呟く。
梓が知らない梓の魅力。
梓が知らない梓の笑顔。
私の大好きな梓が詰まった、その写真……。
その写真の中には、幸せな梓の笑顔が溢れていた。


「憶えてるだろ……?
教室でライブをする前に、純ちゃんに撮られた写真だよ。
あの日、ポケットに入れてたおかげでさ、写真も一緒に転移してたんだよ」


「あの時……の……」


呟きながら、食い入るように梓がその写真に視線を下ろす。
屋上で梓を見つけた後、
一瞬だけ部屋に戻って制服のポケットから取り出した写真。
上手く言葉に出来ない、上手く想いを伝えられない私だから、
せめてこの写真で想いを伝えられればと思ったんだ。


「いい笑顔……だろ?」


私は写真を見つめる梓に囁く。
梓がこの写真を見て何を思ってるのかは分からない。
滅多に見る事の無い自分の笑顔に対して、どう感じてるのかは分からない。
この写真を初めて見た時の私と同じみたいに、予想外な自分の表情に戸惑っているのかもしれない。
でも、きっと分かってくれてもいるはずだ。
写真の中の梓の笑顔が、とても幸せそうだって事に。
幸せそうな理由は、勿論一緒に写ってるのが私だからってだけじゃない。
ちょっと残念だけど、それだけが理由じゃない。
私はそれを梓に伝えようと思って、口を開いた。


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