555:にゃんこ[saga]
2012/06/14(木) 17:44:25.23 ID:wM9rIEft0
「ずるい……、ずるいです、律先輩……。
わた……私……、後悔して……も……ううっ、構わ……構わないのに……。
律先輩の気持ち……、私、嫌じゃ……なかったのに……」
「ごめん……、ごめんな、梓……。
でも、今は駄目だ。駄目だと思う。
これは私の我儘だ。怒ってくれたって構わない。
これまで自分の気持ちから逃げてて、上手く言えなかった私の責任だ。
どんなに責められたって仕方ないと思う。
だけど、それだけは……、それだけはしちゃいけないんだ……」
私は絞り出すように言葉を吐き出す。
辛い言葉。胸が強く痛む言葉。
声に出す度に心が削り取られていくみたいだ。
辛い……、叫びたくなるくらい辛い……。
それでも、ここだけは譲るわけにはいかなかった。
私は梓の笑顔が好きだから。
何の迷いもなく傍に居たいと思えていた梓の笑顔が好きだから。
私は、譲らない。
「ずるい……、ずるいです……っ!」
呟きながら、梓が私の胸に両拳を交互に振り下ろし始める。
何度も何度も私の胸を叩く。
でも、その拳には力が入ってなかった。
軽く置くみたいな速度で、私の胸に言葉の代わりに想いを叩き付けていた。
私はその梓の拳を受け続ける。
避けたりなんてしない。
私は今度こそ、梓とまっすぐに向き合うんだから……!
梓が私の胸を叩きながら言葉を続ける。
「嫌い……、嫌いです……。
律先輩なんて……、大っ嫌いです……っ!」
「……ああ」
「自分勝手で、大雑把で、いい加減で……、
練習しないし、お菓子ばっかり食べてるし、変な事ばっかり思い付くし……、
ううっ……、本当に嫌な……、嫌な先輩です……っ!」
「……ああ」
「大雑把でいい加減なのに……、
自分の事しか考えてないように見えるのに……、
それなのに……、最後の……最後には……、
私の事……や……、先輩方の事をちゃんと……考えてて、
先の事もしっかり考えてて……、うううううっ、ひっく……。
そんな……そんな所……、本当に……本当に大っ嫌いっ!」
「……ああ」
「ずるい……、ずるいよう……。
律先輩ったら……、最後の最後で逃げ出さなくて……、
私にも逃げるのを……許してくれなくて……。
私の……後悔なんか……、私……、気にしない……しないのに……っ!
どうして、律先輩は……そんなに……っ!」
「……ああ」
「だけど……、だけど、私……。
そんな……、そんな律先輩が……。
わた……、私……」
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