564:にゃんこ[saga]
2012/06/17(日) 17:50:07.64 ID:LMLRxZRo0
◎
どれくらい泣いてたんだろう。
本当に涙が涸れるくらいに泣いて、私達はようやく泣き止んだ。
思う存分泣いたと思う。
泣けたと思う。
かなり朝も早い時間に外に飛び出して来たはずなのに、
気が付けば太陽はかなり高い場所で私と梓を照らしていた。
梓と二人して泣き腫らした目で、太陽を見上げてみる。
空は青かった。
太陽も眩しかった。
例え唯の夢の世界だとしても、世界はとても綺麗だった。
いや、唯の夢の中だからこそ、かもしれない。
唯はとても多くの物を大切にしている。
一番をいくつも持ってる。
きっと唯の中では、何もかもが輝いてるんだ。
辛い事、悲しい事、苦しい事、全部含めて眩しいくらいに光ってるんだろう。
思い出っていう名前の宝物として。
唯が居たから、私は高校生活が心の底から楽しかった。
あいつが傍で笑ってくれるだけで、
何もかも上手く行ってなくても、それでいいかもしれないって思えた。
だから、私達は唯を失いたくなかった。
しがみ付いてでも、唯と生きる日常を守りたかったんだと思う。
そうして起こった奇蹟が今の私達が置かれてる現状で、
それがよかったのか悪かったのかはまだ分からないし、これから皆で話し合っていくべき事だろう。
「すっごく泣いちゃいましたね……」
まだ目の端を少し濡らしながら、不意に梓が軽く微笑んだ。
散々泣いてしまった自分を少し恥ずかしく思ってるんだろう。
頬をちょっとだけ赤く染めていた。
でも、それを言うなら私だって同じ立場だった。
私も少しだけ恥ずかしさを感じながら、小さく笑ってみせる。
「そうだな……。
すっげー泣いちゃたよな……」
言って、梓と瞳を合わせて、また二人で笑う。
恥ずかしさは確かにある。
悲しさや辛さが全部無くなったわけでもない。
それでも、ひどくすっきりした気分なのは確かだった。
私も、多分、梓も。
私達はずっと自分の心に嘘を吐いていた。
和達の事を忘れて、思い出を捨てて、
未来だけ見なきゃいけないって自分に言い聞かせてた。
そうしなきゃ、この世界で生きてく事なんて出来ない。
それこそが自分達に出来る唯一の事だと思ってた。思い込もうとしてた。
でも、それは違ったんだな、って今は思う。
結局、私達は怖かったんだ。
和達の事を思い出すのが、怖かったんだ。
皆の安全を考えるためとは言え、私と梓は和達の事を見捨てた。
私達はそれを思い出したくなかったんだ。
だから、和達の事自体を忘れようとしちゃってたんだと思う。
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