570:にゃんこ[saga]
2012/06/17(日) 17:59:21.84 ID:LMLRxZRo0
「うん、戻るよ……。
私だって元の世界に戻りたいんだぜ?
勿論、元の世界は辛い事が多いんじゃないかなって思う。
唯ほどではないけど、私達だって大怪我をしてるはずだし、
元の世界に戻れたとしても、その最初は病室のベッドで冴えない目覚めを迎える事になるんだろうな。
冴えないよなー……。
それでどうにか戻れたとしたってさ、おまえ達とはまた離れ離れになる。
学校生活に戻って、顔を合わせる事もどんどん少なくなって、
今のこの閉ざされた世界みたいに四六時中顔を合わせるって事は本当に出来なくなる。
歳を取る度に、会う機会が全然無くなっていくんだろう……。
それは正直辛いよ、私も。
だけどさ……、この世界で傍に居るって事と、
元の世界で傍に居たいって思い続ける事とは、何かが違うって思うんだ。
私達が目指したのは、この世界でいつまでも傍に居るって事じゃなかったはずだよ。
会えなくても……、辛くても……、悲しくたって……、
皆の事を思い出すと元気になれて、たまに会えると昔みたいに笑い合えて、
そういう意味で永遠に皆の傍に居たかったはずなんだ」
「『永遠に一緒だよ』……」
梓が『天使にふれたよ!』の歌詞を口にする。
ひょんな事から叶ってしまった永遠……かどうかは分からないけど、
少なくとも永遠に近い、私達の……、私達だけの日常生活。
だけど、やっぱりこれは私達の求めた永遠とは違っているはずだから……。
梓は力強く頷いてくれたんだ。
「戻りましょう、律先輩……。
私、また律先輩が大好きだって言ってくれる笑顔になりたいです。
皆と笑顔になりたいです。
本当の永遠を手に入れるのは、その時なんだって思いますから……。
律先輩も、澪先輩も、ムギ先輩も、それに……」
「ああ、勿論、唯も連れて、一緒に元の世界に戻ろう、梓。
そのために出来る事が何なのかはまだ全然分かってないけどさ、
皆で唯が元の世界でも目覚められる方法を考えてながら、探して行こう。
戻ってやるんだ、唯も一緒に……な」
「……はいっ!」
それが私達の決心。
偽りの笑顔と偽りの信頼、偽りの絆を捨てて、
今度こそ私達は本当の笑顔と信頼、絆を取り戻しに行くんだ。
先はきっと長いだろうけど、いつか必ず皆と一緒にその道を見つけ出してみせる。
でも、今はそれよりも先に……。
私は立ち上がる。
長く泣いてたせいか少し立ち眩みはしたけれど、別に問題は無かった。
これから私達は前に進むんだ。そう思うと、立ち眩みなんてすぐに気にならなくなった。
私に続いて、梓も立ち上がる。
梓のその表情は、私の大好きな笑顔にまでは及ばないまでも、いい笑顔だった。
私は宣言するみたいに梓に言った。
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。