過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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579:にゃんこ[saga]
2012/06/20(水) 17:57:33.17 ID:WKz3Fjby0
私は言葉がまた出なくなった。
今までみたいに絶句したわけじゃない。
嬉しかったからだ。
嬉しくて、ただ嬉しくて、胸がいっぱいになって言葉が出なくなったんだ。
私も梓も想いを素直に表現出来ない者同士だと思う。
だから、嫌われてると思ってたわけじゃないけど、
梓が私の事を好きだと言ってくれるのは本当に嬉しかった。
それだけで軽音部で活動して来た価値があったって思える。

私は口を開く。
何て言ったらいいのか分からないけど、私はこの想いを言葉にしたかった。
梓が私を好きで居てくれて嬉しいんだって。
こんな私なのにありがとうって。
その気持ちだけはどうにか伝えたかった。
でも、その言葉は梓が私の唇に右の人差し指を当てる事で制されてしまった。
まだ梓には話したい事があるって事なんだろう。
私は出そうだった言葉を呑み込む。
その私の様子を見届けると、梓は頬をまた赤くさせながらはにかんだ。


「私、律先輩の事が好きです。
大好きなんですよ?
ですけど……、本当にキスしたいくらいまで好きなのかは、私にも分かりません。
先輩としては大好きですけど、それとキスとは全然別問題じゃないですか。
恋愛関係とは全然違うじゃないですか。
ただの先輩にキスしようとするなんて、変な話じゃないですか。
そんな風に自分の気持ちがよく分かってないのに、
キスしようとするなんて、気の迷い以外の何物でもないじゃないですか。
だから、さっきの私の行動は気の迷いなんです。
気の迷いなんですよ、あれは……」


そうか……。
確かにそれは気の迷いだな。
自分の気持ちもはっきりしないのにする事なんて、全部気の迷いって言っても過言じゃないもんな。
梓の言う事はもっともだよ。残念だけど、そういう事なんだよな……。

……?
あれ……?
残念だ……、って思ったのか、私……?

胸が激しく鼓動するのを感じる。
若干、痛みも感じる気がする。
何だよ……?
これってひょっとして……、失恋の痛み……ってやつ……?
私ってそんなに梓の事が……?
いや、でも、だけど……、そんな簡単に決めちゃっていいのか……?


「梓……、あの……、私……」


私は何かを伝えようとして言葉を出した。
でも、想いも気持ちも言葉も固まらない。
情けない事だけど、多分、初めての感情に動揺する事しか出来なかった。
今、私はどんな表情をしてるんだろう……?
やだな……、こんな表情、梓に見せたくないな……。
泣き顔は見せられたのに、今の表情だけは見てほしくない。
一瞬、私は梓の顔から視線を逸らしそうになる。
だけど、梓はその私の情けない行動を柔らかい言葉で止めてくれた。


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