過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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634:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 17:55:02.06 ID:zmR1v/Ro0
「なあ、皆。
私さ……、皆に聞いてほしい事があるんだ。
この世界やあの風の正体は今の所は澪の考え通りの物でいいって私は思う。
元の世界に戻る方法もこれから皆で探したい。
でも、私、思うんだよ。
多分……、いや、きっと、元の世界に戻る前にあの風が……」


瞬間。
私の言葉が止まった。
風が。
強い風が吹いたからだ。
ひどく強い、目も開けてられないくらいの強い一陣の風。
私も含め、皆が一陣の風に体勢を崩される。
それでも、目だけは閉じない。
見開いていてやる。
もう目を閉じる事は……、
目を逸らす事はしてやらない。

一陣の風は数秒吹いていただろうか。
気が付けば、私の瞳はこれまで目にしていた風景とは全く違う物を捉えていた。
風以外に何の前触れも無かった。
まるで映画の場面転換みたいに、私は……、
私達はロンドンとは全く違う場所に転移させられていた。

転移させられた場所には今回も見覚えがあった。
日本風の建物が周囲に見える長い橋の中央。
ここは確か……。
修学旅行、猿山を見に行く前に通った京都……?
いや、京都だ。
私はまた一陣の風に弄ばれ、
予想もしていなかった場所に転移させられてしまったんだ。

覚悟はしていた事だったけど、
胸に強い不安を感じた私は急いで周囲を見渡した。
四人の姿はすぐに見つかった。
当たり前だ。
すぐ傍に居るんだ、探すまでもない。
だけど、皆、動揺を隠し切れてなかった。
分かってはいた事なんだろうけど、頭で分かる事と心で分かる事とは全然違う。
私だって自分自身が胸の鼓動で息苦しくなるのを感じていた。

やっぱり、そうだ。
一陣の風は止まらない。
唯の意思とは関係なく、これからも無作為に無規則に吹き荒れる。
いつかは必ず私達を引き裂く。
あの風には、きっと抵抗しても無駄なんだろう。
あの風の前では私達は単なる無力な存在でしかない……。

と。
唯がその場に両膝を着いて崩れ落ちた。
両手を着いて、一陣の風の余波のある京都の空に視線を向ける。


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