過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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645:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 18:01:14.75 ID:zmR1v/Ro0





新曲が始まる。
この世界だからこそ作曲出来た私達の新曲。
一度だけ全てに目を通してみたけど、曲よりも歌詞の方がとても印象に残った。
曲は勿論、時間を掛けただけあって相当いい出来なのは分かった。
けど、やっぱり心に残ったのは歌詞の方だった。

澪が口を開き、ベースを弾きながらその歌詞を歌い始める。
風に翻弄されて、風に乗って彷徨ってきた私達の今を歌い出す。
私達はずっと翻弄されてきた。
あの一陣の風にってだけじゃない。
人生や、生き方や、時代や、色んな物に翻弄された。
翻弄されて、怖くて、不安になった。
永遠だと思いたかった絆もすぐに崩れ落ちそうになって、
それが悔しくて自分と皆の心を縛り上げて、
無理矢理にでも傍に居る事に偽りの安心を得ていた。
そのままならきっと幸せの中に居られたんだろうと思う、偽りの幸せの中に。

だけど、私達はそれじゃいけないんだって事に気付いた。
皆が自由で、自由のままで皆と一緒に居なきゃ、決して嬉しくないんだって気付いた。
多くの間違いを重ねて、多くの失敗を重ねて、やっと歩き出せるようになったんだ。
だから、私達は道なき道でも歩いて行くんだ。
どんなに多くの不安を重ねたって。
傍に仲間が居なくたって。
一緒に居られた頃の事を胸に抱いて。

ムギが見事なキーボード捌きを見せる。
『天使にふれたよ!』と『U&I』ではブランクを見せたムギだけど、
新曲に関しては何のミスも無く演奏してるみたいだった。
それだけ新曲に対する思い入れが強かったんだろうと思う。
私達の事を心配に思って大切に思ってくれていたムギ。
皆のために医学の勉強までして支えてくれていたムギ。
今は新曲で演奏の根本を支えてくれてる。
皆を大切に思ってるからこそ出来る演奏。
そんなムギを、私も今度こそ支えてあげたいと思う。

澪が精一杯の形相でベースを弾きながら、言葉を音楽に乗せていく。
臆病なのに、自分の恐怖に向き合って、誰よりも前に進む事が出来た澪。
今だって怖いだろう。
本当は逃げ出したくて仕方が無い恐怖がその身を襲ってるんだろう。
でも、逃げない。
逃げずに、多分、ほとんど澪が考えたんだろう歌詞を旋律に乗せる。
感じられるのは澪の強い意志。
どんな世界だって、澪が見ている私みたいに力強く生きてやろうって意志だ。
本当の私は澪が思うほど強くなんてない。
もしかしたら、澪だって私が思うほど強くないのかもしれない。
だけど、お互いがお互いに無い物を持ってるからこそ、
それをお互いの強さだって感じられるのかもしれない。
だったら、少しでもお互いのために強くなってやろう。
それが私達幼馴染みの関係なんだ。

唯がギターを弾きながら澪の歌にコーラスを重ねる。
この世界の根本となる夢を見ている唯。
それは唯が弱かったからでも我儘だったからでもない。
唯はきっと私達が悲しんでるのを見てられなかったんだ。
私達が悲しんで泣いていたから、私達の願いを叶えてくれたんだ。
サヴァンだか何だか、不思議な能力を使ってまで……。
今だって澪と同じマイクを使って、澪の歌を支えてくれてる。
二人で顔を合わせて、笑顔でコーラスをしてくれてる。
全ての物を大切に思う唯だからこそ、私達皆を支えてくれてるんだ。
今度は私達が唯を支える番だ。
どうすればいいのか見当も付かないけれど、絶対に唯を助けてやる。
皆と離れ離れになる事になったって、一人でも唯を助けられる方法を探すんだ。


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