過去ログ - とある白虹の空間座標(モノクローム)
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7:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2012/01/22(日) 00:00:02.18 ID:fjIUU0KAO
〜4〜

そして黄昏が近づき、ガラスのティーポットの中のグリーンティーが底を尽く頃合いに食蜂は席を立った。

食蜂「来年の今頃、貴女もきっと後継者を指名している事でしょうねぇ」

御坂「ないわよ」

食蜂「とは言ってもぉ?貴女が後事を託せるような後輩なんてあの子パンダちゃんくらいだとは思うけどぉ」

御坂「人の話聞きなさいって!」

食蜂「――私の神通力が囁いてるわぁ。“彼女”は、いつか貴女と切り結ぶ日が必ず来るって♪」

女王は真紅のダッフルコートを羽織り、席を立ちながら語り掛ける。
テーブルの上に『人魚姫』の原書本を置き、眉を顰める御坂へ背を向けて。

御坂「――私と黒子が?ないない。ありえないわ。黒子を後継者にするって話以上にありえっこない!」

今だってお姉様お姉様って隙あらばベッドに潜り込んで来るあの黒子が?と御坂は手を振って一笑に付した。
そもそもが“お姉様の露払い”を自認し、今も風紀委員に身を置くほど正義感の強い彼女と何がぶつかるのかと。だがしかし

食蜂「……“ブレンターノのローレライ”って詩は知ってるぅ?」

御坂「知ってるわよ。確か恋人に裏切られて、裁きの場に引き立てられ死を願ってもそれさえ叶えられず、絶望の果てに恋人との思い出の場所で死ぬ……とかなんとか暗い話だったっけ?確か」

食蜂「その通りぃ☆女の子は誰しもがマーメイド♪けれど時と場合によってセイレーンにだってなるのよぉ。貴女の女子力じゃまだ難しいかなぁ?」

御坂「人を馬鹿にすんのもいい加減に――きゃっ!?」

その瞬間、轟ッッ!と一際激しい桜吹雪が吹き荒び、逆巻く花嵐が食蜂を取り巻いて行く。
血のような赤色と骨のような白色が綯い交ぜとなった幕が引かれ、御坂が一瞬目を閉じると――

食蜂『私は“嘘”が嫌いなの。いつの日か、貴女にもそれがわかる時が必ず来るわぁ』

御坂「ッッ!?どこに――」

食蜂『――また会いましょう?憎くくて愛しい、私の後輩(みこと)――』

食蜂の姿は既に二階のカフェテラスにはなく、さざめく桜の花片を残して消えていた。
その場にブラックローズの押し花をした栞の挟まれた『人魚姫』を置いていったまま。

御坂「……そんな事、ある訳ないじゃない」

春風に手繰られたページ、古めかしい挿し絵には魔女からナイフを手渡された人魚姫の姿が描かれていて――




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