249:石の壁 (お題:覗き穴) 2/5[sage]
2012/04/19(木) 00:47:26.33 ID:8kZbww6po
ふと彼は、石レンガの壁に小さな穴があいているのに気が付きました。
人差し指ほどの直径で、隣の牢屋を覗けそうです。
騎士は、何の気なしにその穴を覗いてみました。
姫がいました。
騎士の心臓は跳ねあがり、次に自分の目を疑いました。
光の加減で見える幻かもしれない……。
そんなことを考えながら、男は石の壁に顔を貼り付け、覗き穴を覗き続けます。
そしてやっと、穴の向こうの姫は、確かにそこに存在することを認めました。
姫は石で出来た床の上に、うつ伏せに、顔を騎士の方に向けて倒れていました。
背中の上下で、呼吸を認めることはできましたが、瞳は閉じています。
彼の心に黒い物が満ちました。
自分の忠誠を誓った、護るべき者を、護れなかった……。
その現実が、彼の中に絶望を注ぎ込みます。
姫は盲目でした。
常に目を閉じていました。
その姫の隣で、姫を護るのが騎士の役割でした。
そんな姫を、騎士はいつも眺めていました……。
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