250:石の壁 (お題:覗き穴) 3/5[sage]
2012/04/19(木) 00:48:35.00 ID:8kZbww6po
騎士の心から希望が消え、何も考えず、ただ覗き穴から姫を覗くだけになりました。
そうしていると、なぜか心が安らぐのです。
騎士は気が付きました。
今の騎士は、王宮で姫を護っていた時と何も違わないことに……。
壁を挟み、目の見えない姫を、ただ見つめる……。
違うのは、二人の間の壁が『石の壁』か、『身分の壁』か、それだけだったのです……。
姫を覗き穴から見つめる騎士の目は、王宮で姫を護っていた時の目と全く同じでした。
一枚の壁を隔て、姫を見つめる。
時々近づこうとして、すると壁も近くなって、壁を壊せそうな気がする。
しかしそんな力はなく、壁はどうしても壊れない。
どうしようか思い悩み、カツ、カツ、カツと歩きまわる。
そして結局また元通り……。
そう考えてからは、騎士は残された全てを、姫を眺めることに費やしました。
姫は相変わらず、ずっと顔を横にして倒れたままです。
姫の呼吸で動く肩を、騎士はずっと覗き穴から見ていました。
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