過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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393:題名「カラー・チェンジ」 3/7 お題「コンディション・グリーン」[sage]
2012/05/20(日) 08:23:47.33 ID:/r/zvaHP0
「は?」
「だから緊急警報が発令されたと言っている」文野は何かに怯えているように語気を振るわせている「さっきの放送、聞いてたろ」
「そういえばそんなことが」
 あれは情報の授業が終わってすぐのこと、寝起きのような粘っこい倦怠感の中を、止めたはずの目覚まし時計がまた鳴ったような感じで、
突然にスピーカーが叫んだのだ。その時の三城はただ何を思うでもなく文野の胸を凝視していて、スピーカーの言うことよりもあのDカップの
双丘の方がよっぽど――

「三城くん。飛んでる場合じゃない」
「いでっ!」耳を引っ張られた「何をする文野!」
「逃げるんだよ!」
 文野が叫んだ。周りの呆気にとられたような視線も気にしないで。
「――逃げるって? え? どこに? どうして?」
「三城くん。逃げないとまずい。状況をかいつまんで説明すると、このN市立第二十三高等学校に侵入者だ。うん、どうセキュリティ突破した
かだって? そこまでは知らない。どうしたんだろうね。もしかしたら北のスパイかもしれないな。こんな平凡な学校に何の用事かは知らない
けど
 とにかく例の不審者は。職員室に押し入り、教員を刺した模様」
「――殺したのか?」
「――殺したかもしれない。また、私たちも殺されるかもしれない。とにかく、逃げないとだめだ」
 文野が顔を近づける。やや色素の薄い唇が目の前で忙しそうに動く。
「三城くん。きみはまさか、生徒手帳のクソみたいに役立たずな校則を守ろうとしてるんじゃないだろうね。緊急警報時は教師の指示に静かに
速やかに従うのだ、と」
「そうするのが普通じゃないか」
「教師がいないのに普通もベンツもあるか!」
「でも」三城は文野から顔をそむける「まだ、誰も動いてない」


 三城の視線の先には、文野の胸が揺れていた。そこだけ風が通り抜けるように痙攣している。ぽたりと、何かの雫が胸を濡らした。雨でも降
っているのか、三城は思う、このまま制服が透けやしないか、と。
 キャンディと唾を同時に呑み込んだ。
「三城くん」文野の声は震えている「きみの意向はよくわかった」



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