過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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460:卒業式(お題:パイプ椅子)  ◆Qfu.mTwFskGG[sage]
2012/06/01(金) 09:27:30.83 ID:wtElJCM/o
目を覚ました男の目に最初に飛び込んできたのは見覚えのある校章だった。
左右に暗幕の束を携えた舞台の上方に、その校章は掲げられている。
舞台の上は閑散としており、ありがちな表彰台だけがぽつりと置かれていた。
舞台から少し左へ目を逸らすと、そこには校歌の書かれた木の板が壁に掛けられている。
何故それが校歌だとわかったかというと、男はその歌詞に見覚えがあったからだ。
それは男が十年ほど前に卒業した小学校のものであった。
記憶が定かではないが、先ほどの校章も男の卒業した小学校のそれと類似しているように思われる。
ここはあの小学校の体育館なのだろうか。
男は下の向いて考える。
ワックスの塗られた床は遥か天井に吊るされた無数の照明の光を乱反射し、いくつかの影を映していた。
そのどれもがパイプ椅子に座った男の足元から伸びたものである。
赤、青、緑、黄、色とりどりのテープによって様々なコートが形成されている。
当時は何を指しているのか見当もつかなかったが、今ではそれぞれがどの球技に使われるものなのか手に取るようにわかる。
男は意味もなくその中の一つを目でなぞりながら、自分が置かれた状況を整理しようとしていた。
今朝はいつものような締まらない目覚めだった。南側の窓から差し込む日差しが眩しかったのを覚えている。
朝食とも昼食ともいえない中途半端な時間に適当に見繕った食事を取った後、数時間の記憶がない。
しかしこれはいつものことだ。おそらくインターネットかテレビで意味もなく時間を浪費していたのであろう。
その後、太陽が100度の角度を通過した頃、男は気晴らしのため散歩に出かけた。
記憶が残っているのはそこまでだった。
何度思い返してみても男がここにいる理由は見つからなかった。
男はパイプ椅子から腰を上げ、緑の線を徒に辿って歩いてみた。
スニーカーが擦れ体育館特有の甲高い音が響いた。


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