過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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516:空は誰よりも空気を読む(お題:小雨)1/3 』 ◆euRfGW8cm.[sage]
2012/06/11(月) 10:59:58.41 ID:U/cHPw7Q0
 テニスラケットと教科書の入る大きなカバン。
 体操服と、給食着の入ったかわいい刺繍の布袋。
 二つだけでもうどれだけ重い事だろう。せめて学校に教科書を置いておければ良いのに、うちの担任は厳しくて許可なんてしてくれない。
 一部の男子はそれでも頑張って置き勉を繰り返しているけど、そろそろ職員室に持っていかれる時期だ。
 困った顔をする山田の顔が目に浮かんで、つい面白くなった。
 とりあえず、こんなにも重いのに、ちょっと雲がいつもより暗いかな、程度でお母さんに「今日は雨が降るわよ。傘を持って行きなさい」なんて言われても、面倒くさくて面倒くさくて、お母さんの言う事を無視して傘を持たずに家を出た。
 学校まで距離は15分と、わりと長い。走って10分以内になりはするけど、ずっと走り続けるなんてしたくない。別にしんどいのが嫌な訳じゃなくて、それ以上の距離を部活で走ってはいるけど、朝から身体が汗で臭くなっちゃうのがあり得ない。
 そう、あり得ない。スプレーでもその臭いは流石に、間に合わないし。
 私は気持ちだけ早歩きで道を進む。
 始業のチャイムまでは余裕の時間があるから、別に間に合わないってことはないけど、なんだかんだ言って、やっぱり雨はヤバかった。
 びしょびしょぐちょぐちょになったら、最悪体操服で授業を受ける事になるかもしれない。うわっ、考えただけで恥ずかしい。
 スカートの丈で膝が隠れる制服ですら死んでいるのに、体操服なんて絶望的だ。
 きっと、涼介君も笑う。
 嫌な笑い方はしないで、「濡れちゃったんだ、大変だね」なんて、名前の通りの涼しげな笑顔で言うに決まってる。優しいに決まってる。
 うわぁ、死ぬ! そうならない為にも、急げ私!
 「恋じゃないの? それ、絶対恋だよー! 」
 どでかい声で真由美に言われた言葉が、頭の中でぐるぐる回った。
 ぐるぐるぐるぐる。
 ヒィッ、分かったから! 恋です! 認めますので、だから、消えてください。
 消えてくださいと何度も心の中で呟きながら、後ろに流れて行くアスファルトのでこぼこを見つめて歩いていると、視界に何か、透明の線ようなものが見えた気がして、ヒヤッとした。
 ヒヤッとしてゆっくり目を凝らしてみると、やっぱりがっかり雨だった。
 お母さんのバカ、なんで言ってくれないのよと思いかけて、やめた。
 そういえば言われてた。
 バカは私だ。


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