609:あとあじ(お題:飴玉)3/5
2012/07/08(日) 22:18:06.46 ID:KGdJr4PQ0
鈍行列車に揺られること約二時間。
ようやく目的地の軽井沢へと到着した。
ただ行くだけ行っても仕方がない。という正哉の意見で、
行く目的を作る為に、一昨日、人工的に涼しいところ(市の図書館)へ行きガイドブックを読み漁った。
電車賃だけもかなり厳しいから、あまりお金を掛けずに思い出になりそうなところ。
そんな条件の合ったスポットを見つけるのは至難の業であったが、
正哉が珍しく良さそうな提案をした。
「ここなんてどうかな?」
ガイドブックに乗せられた指先には「川田ガラス工房」の文字があった。
吹きガラスという方法で、グラスや一輪挿しなどの製作体験が出来て、
当然作ったものは持ち帰ることが出来る。それに値段も、一人三千五百円程度。
私は二つ返事で
「うん。そこにしようか」
と正哉の意見に賛成した。
軽井沢駅から「川田ガラス工房」までは、歩いて1時間近くもある。
地元では歩き始めて1分もしないうちに、汗がにじんでくるが、
さすがは避暑地で有名な軽井沢だ。
歩き続けても、少し汗ばむ程度で不快感は少ない。
やっぱり来て正解だったね。と横を歩く正哉に同意を求めたが、
正哉の反応は少し鈍かった。
ふたりで話しながら歩いていたので、気が付かなかったが、
少し遠くに「川田ガラス工房」という看板が見えた。
正哉もそれに気がついたのか、静かにめくばせをし、
私がそれを認めると二人の歩調が少しだけ早まった。
「川田ガラス工房」の外観はガラス工房というより、おしゃれなカフェに近かった。
外壁がレンガ調で、建物全体は淡いクリーム色をしている。
地元にはこういうお店がないので、私はすこし見とれてしまっていた。
「そろそろ、入ろうか?」
正哉に促され、あわてて我に帰った。
扉を開けると、すぐさま
「いらっしゃいませ」
と、柔和な笑みを浮かべたマスターが姿を現した。
「一昨日、電話で吹きガラス体験を予約した須藤です」
すかさず正哉が答える。
マスターはよりいっそう笑みを深め、
「お待ちしておりました。こちらへ」
そう告げると、店の奥へと進んだので、
二人でそれに付いていく。
奥へと進むとようやく工房らしくなり、
色々な道具などが置かれていた。
大きな箱の様な物の前でマスターが止まり
「それではこれより吹きガラス体験を始めさせて頂きます」
よろしくお願いします。と二人で頭を下げ、
マスターの説明に耳を傾けた。
道具や工程を一つひとつ丁寧に教えてくれるのでとても分かりやすい。
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