過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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907:感想[sage saga]
2012/08/06(月) 00:24:41.33 ID:XiPSvHLq0
読んで感想書きたくなったものだけ書くことにした。小説って面白さの如何もさることながら
語りたくなってナンボだと思うから、語りたくない小説にはご縁がなかったってことで今回はあきらめていただきたい。

 NO.8 海に還る(お題:500円玉)◇IL7pX10mvg氏
 これが一番語りたくなった小説だった。技巧だのなんだのはどうでもよくて、何か書きたいものが作者の中にあって
それが上手く形にはならずともとにかく書いてやった、って言うのが見えた。

>彼女のこの付け焼き刃的知識、僕は結構好きだ。五百円玉には詳しくなるくせに他のコインには全く詳しくない危う
>さとか、きっと知識として残るのは変造事件についてだけであろうこととか、彼女がこの時のためにいろいろと準備
>をしているのが感じられてなんだか愛くるしい。

 この一節が作品のキーワードめいた機能を果たしている。付け焼刃的、と書いているけれど、この小説自体起こる出
来事のほとんどを主人公が描写しきれないまま次の出来事が起こり、全体として主人公を置き去りにする形で現実の流
れが進行していく。そもそも二人が海に行く、となったのも「語感」だけで決まった突発的なものだし、海に行くのも
滅多にないらしい。それだけでなく、たとえばこういう一連の文章。

> 僕が思うに、結局片道五百円以内で計画を練ったことはあまり重要ではないのだ。いきなり五百円以内で小旅行を
>することになった、という状況が面白いわけで、そこに彼女の思惑があるかもしれないなどという推論にはあまり意
>味が無く、そして面白くもない。だから僕は今まで彼女のアイデアに黙ってついていったし、彼女も努めて面白いこ
>とをしようとしていたのかもしれなかった。

> 僕と彼女の間で不変だったものは確かにあった。では僕らの成長とは一体どこにあるのだろうか。彼女はいつでも
>興味深い存在だったし、僕は彼女と一緒に楽しみ、それを記録してきた。では僕らはその結果を自分たちに活かすこ
>とができていたのか。楽しんでいただけではなかったか。正直なところ、よくわからない。

 文末に注意すればわかるけれど全ては仮定だったり推測にとどまっている。主人公の中で何か確信的なものがあるわ
けでもなく、彼女とも確かな関係が結べているわけでもない。それは風景の描写だったり、行動に観念的な意味づけを
与える文章にもあてはまる。


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