53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/31(火) 22:55:53.67 ID:St0G50lio
あたしは呆然として切られた電話を握り締めていた。自分の贖罪のための行動というつもりはなかった。自分の軽はずみな恋愛のために仲を裂いてしまった委員長ちゃんと先輩を思っての行動だったとあたしは思っていたのだ。
でも、その中にエゴのようなものがなかったと言い切れるだろうか。恋に破れたあたしは友人のために行動することで気を紛わせようとしていたのではないのか。そうだとするとそれは結局自分のためのエゴイスティックな行動に過ぎなかった。
あたしは泣いた。ついに先輩にまで見放されたのだ。あたしはもうこれ以上落ちるところがないくらいに深い場所に落ちたのだ。あたしはそう考えた。
その時携帯が着信音を奏でメールの到着を知らせた。あたしはまだ震える心を持て余したままぼんやりとディスプレイを見た。それは妹友ちゃんからのメールだった。
from:妹友
sub:昨日はありがとう!
『昨日は先輩とイヴのデート中に邪魔しちゃってごめんね。本当に助かったよ! で、妹ちゃんには報告する義務しなきゃだと思うのでメールしました。あたし、お兄さんと結ばれちゃった(汗)』
『昨日勇気を出してお兄さんに泊まってもいいですかって聞いたときは本当に恥ずかしかったよ。お兄さんは少しびっくりしたみたいで、だけど家は大丈夫なのって言っただけでした。もちろん大丈夫じゃないんで、妹ちゃんには悪かったけど協力してもらちゃった。本当にありがと! 一生恩に着るからね(はーと)』
『それでさっきまでお兄さんとベッドの中でいちゃラブ状態だったんだけど(恥ずかしいぃぃぃぃ!)、今は江の島にドライブしている途中だよ。そう言えば妹ちゃんもお兄さんと江の島にドライブしたって言ってたけど何食べた? 何かああゆうことするとお腹へっちゃって(汗)』
『あ、あと、お兄さんから部屋の合鍵をもらったよ。すごく嬉しかった。何もかも妹ちゃんのおかげです。これからも親友だよ(はーと)、つうか妹ちゃんがあたしの義妹になったりして←気が早い(汗)。じゃ、またね。ほんとにありがとね!』
それは今のあたしには厳しい追い討ちだった。もうあたしは何も考えられずにとりあえず機械的に返信の文章を打ってすぐに送信した。
from:妹
sub:Re昨日はありがとう!
『よかったね。そんなにあたしに気を遣わなくていいから』
そんな生まれて初めて経験する鬱々とした状態の中で、あたしは機械的にいつもの習慣になっている家事をすることにした。何も考えないためには体を動かした方がいい。
午前中から夜まであたしは何かに憑かれたように一人きりの家を徹底的に整理し掃除した。もう年末の大掃除が不要なくらいに。クリスマスの夜なのに。
気がつくと結構遅い時間になっていた。
あたしは朝から何も食べていなかったけど全然空腹を感じなかった。
最後に残った玄関ホールの掃除をちょうど終えた時、外からドアの鍵を開ける音がして、やがて玄関のドアが開いた。
「・・・・・・ただいま」
突然帰宅したお兄ちゃんはあたしに気がつく前に誰にともなくぼそっと言って家に入って来た。
「・・・・・・あ」
あたしは思わず声をもらした。
「・・・・・・た、ただいま」
あたしに気がついたお兄ちゃんが気まずそうに言った。
「・・・・・・」
あたしは声もなく呆然として突然現れたお兄ちゃんを見詰めていた。
「今日泊まって行くから」
お兄ちゃんが言った。
その時、どういうわけか今日一日冷たく固く凍り付いていたあたしの心が氷解した。気のまであんなにも嫌悪していたお兄ちゃんにあたしは自然に話しかけた。
「うん・・・・・・おかえり、お兄ちゃん」
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