過去ログ - 女神
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804:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/04(金) 23:25:50.02 ID:n+mpdq76o
 もちろん、最初僕は妹さんとは面識もなかった。うちの学校は有名なマンモス校だったから学年によって校舎が異なっていたし、何より自分の同学年にだって知らないやつがいっぱいいるような有様だったので、学年が違う女の子と面識がないこと自体は不思議でも何でもなかった。

 幼馴染さんはよく気がつく子だった。見た目も可愛いし人気もあるのだけど、それを周囲にひけらかすことなく自然に生徒会に溶け込んでいた。きっと頭がいい子なんだろうな。僕は一年生にして役員の中心となって働くようになっていた彼女を眺めていて、よくそう考えたものだった。自分が可愛くて人気があることに気がついていないような天然の女の子では絶対ない。自分の人気を誇らないように意識して行動しているに違いない。その行動のせいで彼女は、可愛いけど全然それを鼻にかけないいい人という評判を生徒会内で勝ち取っていた。多分、クラスの中でもそれは同じだったのだろう。

 僕は当時はまだ成就しなかった失恋を引き摺っていたから、彼女のことが恋愛的な意味で気になるということはなかったけど、ここまで意識して自分の行動を律する彼女には少し関心を抱いたのだった。それはある意味女と同じだった。彼女も昔周囲の生徒に面倒見のいい女の子という演技をしていたっけ。でも、女は相当自分に嘘を言い相当無理をしてそうしていたのだけど、幼馴染さんの行動は何か自然だった。そういう意味でも僕は彼女に関心があったのだ。


805:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/04(金) 23:27:58.73 ID:n+mpdq76o
 僕が三年生になりしばらくたったある日、幼馴染さんと兄君という男子生徒が付き合っているらしいという情報を教えてくれた副会長が、また新たな情報を仕入れてきた。副会長の話によると、今まで二人きりで登校していた幼馴染さんと兄君という男は、今では四人で一緒に登校しているというのだ。今まで二人きりだった幼馴染さんと兄君に加わったのが、兄君の妹だという妹さんという一年生の子と、兄友君という幼馴染さんと兄君の同級生の生徒だという。

「何人で通っていてもいいけどさ。どっちにしたって幼馴染さんて兄君と付き合ってるんだろ?」
 僕は副会長に聞いた。ところが副会長が話してくれたのは意外な話だった。どうも、幼馴染さんと兄君が付き合っているというのは単なる噂らしいと言うのだ。

以下略



806:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/04(金) 23:30:23.44 ID:n+mpdq76o
 マンモス校ゆえに下級生のことなんて部活でも一緒でない限り知り合う機会なんてないんだけれど、彼のことは噂でよく聞いていた。何しろ無茶苦茶成績がいいらしい。それも、何でこんな学校にいるのか不思議だといわれるレベルで。ある先生が話してくれたことによると、彼は受験直前にこの町に引っ越してきたそうだ。それで、あまりこの地方の高校事情を気にすることなくとりあえず受験できる高校を受験したらしい。僕だってこの学校より高いレベルの学校に入学できたのだけど、話に聞く兄君とはレベルが違うようだった。僕は偏差値とか学校の成績にそれほどには重きを置く主義ではなかったけれど、兄友君の模試での偏差値を聞いたときはさすがに嫉妬心のようなモヤモヤ感を感じたものだった。

「会長は知らないだろうけど、兄友君ってすごく成績がいいんだって」
 副会長が言った。「そのうえ、超がつくほどのイケメンだし」

以下略



807:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/04(金) 23:32:12.06 ID:n+mpdq76o
「・・・・・・どういうこと? ひょっとして彼は重度のシスコンだとか」

「そうじゃなくて・・・・・・兄君、最近ちょっと変った女の子と仲がいいんだって」

 なんだ、兄君と幼馴染さんはお互いにその程度の関係だったのか。去年一年間副会長の情報を信じていた僕は、ずっと幼馴染さんは兄君と付き合っているものだと思っていた。でも、お互いにそれほど深い関心はなかったということか。この辺で僕はこの話題に飽きてきていた。もともと幼馴染さんにだって深い興味があるわけじゃなかったし。
以下略



808:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/04(金) 23:34:01.23 ID:n+mpdq76o
 僕は二人の女の子に興味を抱いた。それは嘘ではなかった。でも、幼馴染さんに対しては恋愛感情はなかったのだ。

 その時僕は、驚いている表情の幼馴染さんを生徒会室の近くの人気のない階段の踊り場に連れ出し、君が好きだと告白した。計画通りに彼女に振られるならいいけれど、万一彼女が僕のことを受け入れたとしたら、僕は彼女に対して酷いことをすることになる。それでも僕は女のことを知るためにはそうするしかなかった。

「・・・・・・迷惑だったら謝るよ。でも幼馴染さんのこと前から気になってたんだ。今まで君に振られるのが怖くて言えなかったけど」
以下略



809:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/04(金) 23:39:40.64 ID:n+mpdq76o
「いや。僕が勝手に思い込んだだけだから。君の好きな人って」
 僕は緊張しながらも幼馴染さんの恋愛関係を探るための言葉を口にした。

「・・・・・・あ」

以下略



810:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]
2012/05/04(金) 23:40:16.45 ID:n+mpdq76o
短いですけど今夜はおしまい

また明日可能なら再開したいと思います


811:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県)[sage]
2012/05/04(金) 23:57:00.48 ID:tZeHVIlno
おつ
男幼馴染


812:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/05/05(土) 18:09:51.76 ID:Z7VtxD3po
なるほど
続きwktks


813:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 22:57:44.12 ID:wMLLgnF4o
 僕の幼馴染さんへの告白は失敗に終った。表面的な意味では、彼女は好きな男がいるからといって僕を拒否したので、客観的に見れば僕の告白は空振りだった。そして実質的な意味で言っても、告白することによって明らかになると思っていた女と兄君、幼馴染さんと兄友君の関係は相変わらず曖昧なままだった。

 幼馴染さんは僕が兄友君の名前を出した時少し戸惑っているようだったから、ひょっとしたら幼馴染さんと兄君が付き合っている、あるいは幼馴染さんが兄友君ではなくて兄君のことが好きなのではないかという推測は成り立った。でも、それは証拠のない単なる推論に過ぎなかった。結局のところ僕は、副会長から聞かされた曖昧な噂話以上の情報を入手することができなかったのだ。

 女が同じ高校に入学していたことは、それからまもなく確認することが出来た。ある朝、僕は早めに登校して一年生の校舎の入り口を遅刻ぎりぎりまで見張ったのだ。
以下略



814:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 22:59:11.38 ID:wMLLgnF4o
 やはり同姓同名の他人ではなかったのだ。僕は胸を痛めた。彼女にとっては僕なんて過去の思い出に過ぎないのだろう。だから、同じ学校に入学してもそのことを僕に知らせる気にすらならなかったのだ。それは僕にとっては厳しい発見だった。ある意味、女が黙って転校したことより厳しかった。

 あの時は、僕たちは家庭の事情というやつに振り回された悲劇のカップルだと思い込むことが出来た。彼女が黙って転校して行ったのも、僕に話したとしてもどうにもならなかったのだからだと。

 でも、こうして同じ学校に入学したことを、女が僕に話そうという発想がない時点で、僕と女に起こった出来事は僕が思い込んでいるようなロマンティックな悲劇などではなく、単に女が僕のことなんか気にしていなかったということになる。それも、おそらく彼女が転校した時から。いや、もしかしたら僕と付き合っていたときから。


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