過去ログ - 女神
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953:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/19(土) 23:06:54.27 ID:PkPM/mEHo
 その日の昼休み、僕はこれでさっきから何度目かわからなくなっていたけど、朝の出来事を思い返してそのことの持つ意味を考えていた。朝の校門の前で、どうして妹はあそこまで僕に肩入れしたのか。副会長と僕のトラブルなんか彼女には全くかかわりのない話だった。妹は副会長とは面識すらなかったのだし。副会長が僕が生徒会室に顔を出さないことで責めていた言葉を聞いて、妹は罪悪感を感じたからだろうか。

 でも、それも不自然だ。僕はそう思った。副会長は直接的には僕が部活にかまけていることを責めたのではなく、僕が幼馴染を避けようとして生徒会活動に参加しなくなったことを責めていたのだ。だから妹が副会長の言葉を聞いたとしても、その言葉に彼女が罪悪感を感じる必然性はないのだった。

 妹が僕のことが好きで、その僕が副会長に責められていることに我慢ができなかったからか。そう考えたい気持ちは僕の心の底に根深く存在していたけど、冷静に考える癖がついている僕の心の他の部分によってその希望は明確に否定された。

 妹が僕を頼っているのは自分のしようと考えていることを実現するのに僕を必要としているからだ。確かに最近の妹は僕の手を握ったり、別れ際に頬にキスしたり、腕に抱きついたりという思わせぶりな行動をしている。でも、それは男として異性として僕を意識しているわけではなく、臨
時のお兄ちゃんとして僕のことを認識しているからだろう。そして最近よく理解できてきたのだけど妹の身びいきはすごく激しかった。妹が兄君や幼馴染さんに対して捧げる愛情は無限大だった。それに比べて周囲の生徒たちへの彼女の関心は、中庭の花壇に這っている虫に対する関心
とほとんど変わらないくらいだったのだ。その虫たちの中には妹に対して熱い視線を向けている男子もいたと思うけど、彼女はそんな視線に気がついたとしてもそれにはまったく無関心に近い態度を取っていたようだった。

 ついこの間までは僕もその虫たちの一人に過ぎなかった。それが、女と兄君を別れさせるという目標を妹と共有し出してから、僕も臨時のお兄ちゃんとして妹の意識の中では身内扱いされるようになったのではないだろうか。

 そう考えると、今朝の妹の言動は何となく理解できる気がした。僕のことなんか、男としては意識していない彼女だけど少なくとも今は彼女の意識の中で僕は彼女が守るべき身内のカテゴリーに入ったのだろう。

 そして僕は最初に妹に協力を持ちかけた時の彼女のセリフを忘れてはいなかった。


『君のことが異性として気になっている』
 そう言った僕に対して妹は真面目な口調で釘を刺したのだった。

『・・・・・・先輩。あたし、今のところ誰かと付き合うとか考えていなくて』

 そうだ。僕は出だしで一度彼女に拒否されているのだ。最近の妹の言動に惑うと最後には彼女を困惑させ自分も傷付くことになる。

 恋人にはなれなくても、妹が見知らぬ三年生の先輩に噛み付くほど僕のことをかばってくれただけでも十分じゃないか。少なくとも僕は妹にとって地面を這う虫ではなくて、身内の仲間入りを果たしたのだから。


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