過去ログ - 女神
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954:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/19(土) 23:10:04.52 ID:PkPM/mEHo
 ふと気がつくと教室内にはもうあまり生徒たちは残っていないようだった。学食や購買に行く生徒たちは昼休みのベルと共に教室を出て行ってしまったから、ここに残っているのは教室の机を寄せ合わせて何人かのグループでお弁当を広げている生徒たちだけだった。今日は秋晴れの
陽気だったから弁当持参の生徒たちも中庭や屋上に行っているのか、教室に残って食事をしている生徒は数人くらいしかいなかった。

 あまり食欲はないけど午後の授業中にお腹が鳴ったりすると恥かしい。僕は購買で余り物のパンでも買うことにして席から立ち上がった時、教室のドアから誰かを探しているように室内を覗き込んでいる下級生の姿に気がついた。

「先輩、まだいてくれてよかった。間に合わないかと思っちゃった」
 妹は教室内で食事をしている上級生たちを全く気にせず、僕に向かって大きな声で話しかけた。

「どうしたの」
 妹の方に近寄りながら、僕は周囲の生徒の視線が気になって低めの声で返事した。普通、学年によって校舎が別れているうちの学校では下級生の生徒が上級生の教室を訪れることは滅多にない。そのうえ妹のような少女が僕のような冴えない男を訪ねてきたのだから、その姿に教
室内の注目が集まったのも無理はなかった。

「これからお昼でしょ? 一緒に食べない?」
 妹は周囲の上級生を気にせず平然とした態度で言った。

「別にいいけど。急にどうしたの」

「急じゃないの。先輩、いつも購買でパン買ってるみたいだから今日は一緒に食べようと思って先輩のお弁当を作ってきたんだけど」

「え」
 さっきまで期待する理由がないと自分で結論を出したばかりの僕は再び動揺した。女の子が僕のためにお弁当を作ってくれるなんて生まれて初めての体験だった。

「今朝、先輩に話そうと思ったんだけど副会長先輩に邪魔されて言えなかったよ」

「そうだったの」
 妹に恋焦がれている僕としては天に昇っているような幸せな気持になってもよかったはずなのだけど、やはり僕はどこまでも卑屈にできているのだろう。同級生たちの面白がっているような表情に僕は萎縮してしまっていた。

 妹はそんな僕の手を握った。

「天気がいいから屋上に行きましょ。中庭はさっき見たらもうベンチは空いてなかったしね」

 僕は呆けたように妹を見つめながら彼女に手を引かれるまま教室を後にした。


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