過去ログ - 女神
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964:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/21(月) 00:01:03.40 ID:iifmGXKho
 僕は、その日はもう放課後に妹と会わないことにした。結局昼休みの間中、僕は僕にくっついて泣いている妹の頭をずっと撫でていた。

 午後の授業が始まる前に僕は妹に注意した。心を乱している彼女にうまく伝わるか不安だったけど、案外妹は冷静に僕の指示を理解してくれた。

「今日は部活は休みにしよう。君は真っ直ぐに家に帰るんだ」

「うん」

「そして今日家に帰って兄君に会っても、兄君のことを責めちゃだめだよ」

「・・・・・・うん」

「兄君と女さんの交際に理解を示す必要はないけど、二人の交際は許さないみたいな態度は絶対取っちゃ駄目だ」

「わかった」

「これからすることが君の差し金だったなんて兄君に知れたら、彼が君のことをどう思うかわかるよね?」

 妹もそのことは十分理解しているようだった。

「わかってる。お兄ちゃんにはなるべく普通に接するようにする」

「くれぐれも嫉妬心を表わし過ぎないように。そうでないと女を陥れたのは君だと疑われるかもしれない」

「心配しないで」
 妹は言った。大分落ち着いてきたようで、その頃には彼女の言葉は柔らかいものになっていた。

「先輩の言うとおりにするから」

 そこで妹は再び僕を潤んだ瞳で見つめた。

「大袈裟かもしれないけど、先輩の恩は一生忘れないから」

「本当に大袈裟だよ。誉めるなら全部うまく言ってから誉めてくれよ」

 妹はくすっと笑った。昼休み時間の最後になって、ようやく僕は妹に笑顔を取り戻させることができたようだった。それが僕には嬉しかった。

「じゃあ、もう行かないと」
 妹はそう言ってった立ち上がった。昼休みも残り僅かになっていた。

 妹が僕の腕から抜け出して先に立ち上がったせいで、まだベンチに座っていた僕は妹を見上げる体勢になった。

「じゃあ、また明日」

 妹が不意に少し屈んで僕にキスした。前のキスとは違ったところに。

 僕は自分の唇に少し湿った小さな柔らかい感覚を覚えながら、早足で屋上から去っていく妹の姿を見つめていた。



 ・・・・・・今日は早く家に帰って準備をしないといけない。とりあえずWEBメールで捨てアドを作るところから始めよう。


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