過去ログ - Ryno-Generation
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8: ◆JbHnh76luM[saga]
2012/02/03(金) 10:16:04.58 ID:ui263o5To


エピソード 1 〜卒業試験〜

「いいか、今から行う試験は実戦を想定したものだ。お前たちは2人1組となってチームになり、敵地最深部にある目印を取ってきてもらう。この際、評価のポイントになるのは目印を早く持ち帰ってくるのではなく、いかに敵を撃破、あるいはかわし、目印に到達し、帰還するかだ。仮想敵には我々教務員と一線で活躍する先輩ライダー達だ。容赦はせんぞ、怪我が怖かったら帰って寝ろ!いいな!?」

「はいっ!」

 強面の教官の言葉にシェル達は改めて自分たちに課せられた試験の難易度を思い知る。

「オッサン達だけでも手ごわいのに、プロのライダーまで連れてくるなんて、無茶だよな」

 解散を告げられて各々チームを組む相手と更衣室に向かう道すがら、シェルの横を歩くパートナーとなったエルマーが愚痴をこぼす。

「先生達の腕前もかなりのモノだもんな」

「あぁ。なんてったって元軍人ばかりだからな。腕はピカイチだろうよ。その上プロだぜ、プロ! ったく、目的地に辿り着けるかさえも怪しいよな」

 溜息を吐きながら更衣室に入り、ライダー・スーツに着替える。身体にフィットしたライダー・スーツは難燃性の素材で出来ており、万が一の場合に備えて色々な機能が付加されている。

「さて、行くか」

 お互いに搭乗前のチェックを済ませ、練習機のあるハンガーに向かう。その途中で教官から目的地に置かれている目印の内容が明かされたデータチップを受け取る。

「何なんだろうな?」

「問題は大きさだよね。大きすぎると運ぶのに1人割かなきゃいけないから、戦うのが1人だけになる。その時を突かれたら厳しいんじゃないかな?」
 シェルの答えに親友はうなずいて何が目印なのかと色々想像したものを列挙しながらムーバに連結された整備デッキに出る。
 シェル達が乗る練習機は完全な人型のライノクラフトで、2本腕に2本足という最もスタンダードな騎体である。ライノクラフトの手や足はライダーの希望で増減することが可能で、それぞれの形で用途も変わってくる。
 例えばシェル達の乗る2本腕2脚の場合は軽装スタイルと呼ばれ、重量のある大型武器などは装備できない反面、スピードを生かして敵の攻撃を避け、攻撃を当てていくというスタイルを取る。他には中量級の4脚や、重量級の6脚などが世の中に存在する。
 片膝をついた状態でアイドリング中の騎体にタラップを使って頭部にあるコックピットに搭乗し、キー代わりになる『脳波誘導コントローラー』のヘッドギアを被る。このヘッドギアこそがライダーとライノクラフトを結ぶ糸であり、ライダーの脳波を読み取って登録されているライダーの脳波と一致しない限り起動もできないし、ライダーが考えるの基本的な操縦を読み取り、それをコンピューターを通して騎体に伝え、動かす。今搭乗している練習機には『鍵』の役割が省かれているが、正式にライダーとなり、ライノクラフトを手に入れた暁にはその機能を使うことにもなる。

『1号機、起動せよ』
 教官の指示に「はい!」と返事をしてから、自分用のデータディスクをスロットに挿入し、メインスクリーン横の赤い起動ボタンを押し込む。
 何も映っていなかった3面あるモニターが次々を起動し、自動的に騎体にエラー箇所がないか、ハード的に、ソフト的にチェックを行う。高速で文字がスクロールしていき、それぞれ異常がない事を示すグリーンマークが浮かんでいた。同時にシェルが今まで訓練の中で積み重ねてきた戦闘データがライノクラフトのメインCPUにダウンロードされる。
 チェックが終了すると、ジェネレーターが本格的に起動して装甲面に埋め込まれたソーラーパネルから取り込まれた太陽光がエネルギーに変換され、ライノクラフトの四肢に行き渡る。

「起動、完了」

『よし。1号機は下車して2号機を待て』

 指示に従ってムーバを降り、エルマーを待つ。数分後、シェルとエルマーの第一隊は合流し、教官の開始の合図を待つ間に目印を確認した。
 データカードを読み取り機に掛け、表示されるのを待つ。

「人間?」

 モニターに投射されたのは一人の女性だった。細かいディテールは省略されているが、衣服と髪型の特徴が表示されている。

『えっと、ロングヘアーで、服はライダースーツか。色は白と赤を使った物だな』

 エルマーの顔がモニターの端に浮かび、声がヘッドギアに装着されている小型のスピーカーから聞こえてきた。

「この人を収容しろって事かな?」

『それ以外ないだろ』

「でも、コックピットに収容できないよ」

 シェルの言う事は事実だった。ライノクラフトのコックピットは人1人が入るとそれで定員オーバーになってしまう。大型の騎体には2人くらいなら乗ることが出来るスペースを持つ物もあるが、今シェルたちが乗っている騎体にはそんなスペースはなかった。

『あ、そうか。じゃあ、手で持つしかないか』

「戦闘に巻き込まれない事を祈るよ」

『同感』

『用意はいいか!?』

 教官の声が割り込んでくる。2人は「はい!」と返答をして敬礼をする。

『よし。目印となる目標は確認したな?』

「はい! しかし……」

 危険性を指摘しようとしたシェルだが、教官の大声に阻まれる。

『では、スタートだ! これ以降の無線の使用は禁止とする。僚機との連絡は接触回線を使うように!』

 無線封鎖され、モニターの一部、教官とエルマーが映っていた窓が砂嵐になり、スピーカーからも砂嵐の音が響いてきた。シェルは通信を切ると、改めて周囲を確認する。
 背後には今さっき下りてきたムーバがその巨体を休ませ、眼前にはライノクラフトが横に5機は並べる程大きな洞穴が口を開けてシェルを待っていた。目印である女性はこの奥に居る、ということだ。


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