165:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:21:08.90 ID:vAi26PND0
「ここらへんかな……」
呟いて、彼は目の前の壁に手を突き出した。それが水面に沈み込んでいくように。合成コンクリートの壁にずぶずぶと沈みこんでいく。そのまま彼は壁の中に飛び込んだ。
出てきた場所は、向こう側ではなかった。
なにやら小汚いマットやソファー。虫が湧いているようなカーペットが幾重にも敷き詰められた、足の踏み場もない程のガラクタが詰まっている狭い部屋。その、やはり汚れたベッドの上だった。よく見ると壁は壊れた機械や折れた鉄骨などを組み合わせて、合成樹脂を溶かしたものを間に塗りこんでいる。部屋の中には足が折れたテーブル。ぐらついた木の椅子。そして一メートルはあるかというくらいの巨大なラジオ機の残骸だった。どうやら中にエアコンが組み込まれているらしく、温かく……しかし砂っぽい風が噴き出している。
ゼマルディは軋み音を上げるベッドの上にカランを下ろすと、天井から油が浮いたコードで垂れ下がっていた電球を掴んで、くるくると回した。しばらくして薄い電気が灯る。
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