959:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:45:47.77 ID:hlIYQLnr0
   姉と弟。 
    
   それだけの関係だ。 
    
   暗に彼女がそう言っているのだと解釈して、 
960:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:46:17.27 ID:hlIYQLnr0
   「僕も行く。連れてって」 
    
   「わらわ達も行きまする」 
    
   硲に便乗して、更紗が騒ぎ出す。 
961:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:47:03.22 ID:hlIYQLnr0
   涙の手の平が薄い白に光っていた。 
    
   更紗はきょとんとして首を振り、途端、表情を落とした。 
    
   「……そういう意味ではございませぬ……」 
962:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:47:45.88 ID:hlIYQLnr0
   外に出ようとした硲を押し留めて、 
   涙はトレーラーの扉を開けた。 
    
   そして泉と外に出て、一見廃墟に見える巨大な 
   ドームのハッチ前に立つ。 
963:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:48:19.75 ID:hlIYQLnr0
   「姉さん!」 
    
   青くなった硲が大声を上げる。 
    
   黒い濁流だった。 
964:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:49:03.63 ID:hlIYQLnr0
   グズリ、と硲が掴んでいたトレーラーのハンドルが、 
   墨汁のように崩れて散らばった。 
    
   体中を真っ黒な物体に覆われ、 
   硲は自分がそこに沈み込んでいくのを感じた。 
965:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:49:37.34 ID:hlIYQLnr0
   落下し始めながら周りを見回し、 
   しかし彼は唖然とした。 
    
   辺り一面真っ黒だ。 
    
966:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:50:16.08 ID:hlIYQLnr0
   既成概念自体を反転させているかのような、 
   そんな違和感を感じる。 
    
   物理攻撃ではない。 
    
967:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:50:54.75 ID:hlIYQLnr0
   それもまたいいかもしれない。 
    
   ――僕は頑張った。 
    
   でも、助けることが出来なかったよ。 
968:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:51:29.27 ID:hlIYQLnr0
   その隣に泉がいた。 
    
   涙が一瞬だけ硲の方を見る。 
    
   硲は、そこでハッとして慌てて体を反転させた。 
969:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:52:12.00 ID:hlIYQLnr0
   二人を抱えて、硲はまた空中を掻き消えると、 
   できるだけ離れた場所に出現しようと念じてから着地した。 
    
   しかし硲がそう思っていただけだったようで、 
   大して先ほどと離れていない場所に出現していた。 
970:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:52:48.42 ID:hlIYQLnr0
   半径十キロ程の球体空間に閉じ込められていた。 
    
   これでは、逃げ場がない。 
    
   自分の能力では、 
971:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:53:17.78 ID:hlIYQLnr0
   「姉さん!」 
    
   愛寡と更紗を抱きしめながら、 
   硲は前方の光る空間に向かって怒鳴った。 
    
972:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:53:55.71 ID:hlIYQLnr0
   * 
    
   「見つけた……チェックメイトだ」 
    
   硲は、意識の外で泉の声を聞いた気がした。 
973:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:54:34.73 ID:hlIYQLnr0
   「お前の負けだ。 
   まぁ……千三十五回も俺を殺せば充分だろう。 
   気は済まねぇだろうが、俺はもう腹一杯だ」 
    
   泉は右手を伸ばして、ギリギリと音を立てて、 
974:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:56:27.00 ID:hlIYQLnr0
   「俺の問いが分かるか? 答えろ。 
   答えなければこのまま殺す。お前の型番は?」 
    
   声にならない叫びを上げて右手を振り上げた青年の腹に、 
   躊躇なく膝を叩きこんで、泉は横で腕組みをしている涙を見た。 
975:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:57:02.35 ID:hlIYQLnr0
   「涙、危な……」 
    
   「しっ」 
    
   兄の言葉を打ち消して、 
976:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 17:57:32.84 ID:hlIYQLnr0
   泉が暴れようともがく青年を首を掴んで羽交い絞めにする。 
    
   「涙、やるんなら早くやれ!」 
    
   「せっかちな人……」 
977:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/07(月) 18:04:26.02 ID:hlIYQLnr0
 お疲れ様でした。 
  
 次回の更新に続かせて頂きます。 
  
 ツイッターやスレ等で沢山のご感想、ありがとうございます!! 
978:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/05/08(火) 22:04:17.20 ID:J+4mAWs60
 こんばんは。 
  
 24話の続きを3スレ目で再開させて頂きます。 
  
 少女「ずっと、愛してる」 2 
979:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2012/05/11(金) 21:06:01.96 ID:L6gJhVcoo
 乙乙! 
979Res/589.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。