過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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22:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga]
2012/02/16(木) 00:42:45.75 ID:hAmAlqxK0
芝生の上でボール遊びに興じている小学生達の向こうに、ベンチに腰掛けた人影がある。
後姿でほむらから顔は見えない。だが、あの背中は見覚えがあった。
……何のことはない、昼間に座っていたのと同一人物だからだ。
ずっと座っていたのか、随分と暇人なのだな、などとほむらは益体もないことを考える。

つくづく、儘ならない。
今日に限ったことではない。昨日から、おかしかったのだ。
出鼻を挫かれる形で突きつけられた、まどかの死。
見えざる手が、まどかをほむらの手が届かない所へ攫っていく、そんな心持ちだった。

運命という奴は、こうまでしてまどかから未来を奪うのか。
それは、まるでまどかが、この世界から締め出されている様で――
そんな世界を、ほむらは時として憎んでさえいた。

気がつけば、緑地は日暮れのオレンジに染まっていた。
ほむらにとっては、進展のない一日が終わろうとしている。

西のベンチの人影は、夕陽を背景に溶け込んで今にも消えそうだ。
橙色をした半円の中に浮く、黒く頼りない虚ろな輪郭。
黒点は陽炎の様にたゆたい、今まさに、太陽に完全に呑み込まれようとしていた。

影が蠢いた。初めそれは蠢動だったが、ゆっくりと立ち昇った黒点は、やがて夕焼け色のプロミネンスへと変化していた。
夕陽からはみ出した、その立ち姿は。

ドクン――

その姿を認めた瞬間に、ほむらは胸が激しく脈打つのを感じていた。
言葉に出来ない、上手く言い表せないが、猛烈に嫌な予感がしたのだ。
あぁ、これは、昨夜まどかの家の前で感じたのと同じものだ、とほむらは思った。
予め用意された望まない結末を、自らの目で確かめねばならない、あの堪え難い苦痛だ。

――私は、あいつを知っている。

宝石の濁りが、ほむらの心に暗い影を落とす。
魂に積もった澱は、持ち主の精神に、ダイレクトに悪影響を与える。

薄紅色の後姿は立ち尽くしている。
顔は下へ俯けたまま、動こうとしない。
一方、ほむらの足は、ほむら自身の意思を離れて、勝手に影の主の元へと向かっていた。
見たくない物から目を背けようと、ほむらは抗ったのだが、糸で繰られた傀儡の様に、身体は前に進むことを止めてはくれない。
一歩、また一歩と。

影は未だ動かない。ほむらが着実に近付いているというのに。
それはおかしい。不安と焦燥はますます煽られる。
ほむらに気付いていない? ……それはない。
アレがもし、ほむらの知る人物であるなら、気付いてないなんて有る筈がないのだ。
少なくとも、ほむらはそう信じている。

真赤に燃える遊歩道に立ち尽くす、彫塑の様に冷たい後姿。
染まる色とは裏腹に、そこには熱が感じられない。
ほむらの目前に、生命の宿らない人形じみた影が、しかし立ち塞がっている。
ほむらが背後に近付いても、こちらに向き直る様子は見られない。

意を決して、ほむらは影の前方に回り込み、夕陽を背にして向き直る。
そして、俯いたままの人影を、視線で射殺さんとばかりに冷然と睨みつけた。

ぴくり、と像が微かに身動ぎし、緩やかなウェーブのかかった髪が揺れる。
太陽を背にしたほむらの長く伸びた影が、彼女の視界を遮ったのだ。
すぐ傍に誰か居ることに、たった今初めて気付いたのか、ハッと息を飲む音が聞こえた。
少女が、ずっと俯かせ、伏せていた面をのろのろと上げる。
その、顔は。


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