過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/02/29(水) 20:51:47.49 ID:fRW4icTG0
夕闇に染まる街の雑踏を、頼りない歩調で進む影が一つ。
自身の気持ちを理解も出来ないまま、何かから逃げる様に、人の群れに身を隠しながら彷徨い歩く。
ほむらは、運命の迷路を廻り続けている。
暁美ほむらという少女の本質は、とても脆い。
本来、容易く絶望に呑まれてしまう筈のほむらが、そうならずに済んでいたのは何故か。
それは偏に、時間遡行による危機回避があったからに他ならない。
まどかの救済という目的が失敗したほむらは、次の時間軸でのまどかという名の希望を求めて旅立つ。
まどかが生きている、話している、笑い掛ける。それだけでほむらは戦えた。
ほむらが立つには、まどかの存在が必要不可欠なのだ。
それ故に、まどかが斃れた後のほむらは、心の平穏の為にも、速やかに時を巻き戻さねばならなかった。
しかし、今それは叶わない。
あと一月近く、時間遡行が行える様になるまで、この虚しい時をやり過ごすしかない。
まどかが居ない世界で生きていくことは、ほむらにとっては拷問に等しい。
まどかという支えを失い、間断なく責め苦を受けるほむらの心は、横薙ぎの風に吹き崩される寸前だった。
だから、不意に遭遇した美国織莉子に狼狽し、行き場を失くした感情が暴力という形で表出してしまった。
付け加えるなら、既にソウルジェムが過半濁っていたことも、暴走の一因と言えるだろう。
何にしても、今のほむらが非常に不安定なのは間違いなかった。
まどかが居なければ、立つことすら儘ならぬ自分という存在。
ほむらは、否応無しに自身の弱さを突き付けられ、心身ともに疲弊しきっていた。
だからこそ、今も逃げている。
……ほむらを追ってくる、儚い蜃気楼の様な人影から。
奥歯を強く噛み締め、苛立ちを隠しきれずにいるほむらが、背後から不穏な気配を感じたのは
夕暮れの緑地公園を立ち去ってから、そう間を置かずにだった。
最初は、勘違いかと疑った。念の為、何度か無意味に角を曲がり、同じ場所に戻ったりしてみた。
すると気配は、まるでほむらに寄り添う様に、ぴったりとある一定以内の距離を保ちながら、尾行してくるのだ。
感覚が鋭敏になっていたのではない。寧ろ、警戒する余裕などない状態だ。
それでもほむらが気付けたのは、相手にも気配を隠す余裕が無いか、技術が無いか、或いはその両方――だ。
必要が無い、という可能性もあるが、ここで考慮に入れる意味は余り無い。
何故なら――。
「一度謝ったでしょう。まだ言葉が足りなかった?」
人気の無い路地に誘い込み、相手に隠れる場所がなくなった所で、先に根負けしたほむらが声を掛ける。
突然ほむらに振り向かれ、びくりと緊張に固まる、やや高めの背丈より一回り以上も小さく見える立ち姿。
柳眉を八の字に曲げ、怯えた瞳をした織莉子だった。
目の前に居る織莉子が責任を追及する狙いなら、ほむらはそれに応じて今一度、誠心誠意頭を下げねばならない。
それで済むならいい。言葉と態度を尽くし、相手が納得すれば織莉子とはそれきりだ。
だが、もしそれ以外の用件である時は。……適当にあしらって切り上げたい。
「あなたは――」
僅かばかりの決意を表情に籠めて、織莉子が口を開く。一旦言葉を切り、選ぶ様に慎重に繋ぐ。
「あなたは、……私をご存知なのですか?」
ほむらは、この織莉子の言葉にも態度にも、戸惑いを覚えた。
今までずっと後をつけ回して、何らかの躊躇があるのだと言うことは察していた。
それはきっと、暴力的なほむらに対する怯えに相違ないだろう。
(本当にこれが、あの美国織莉子なの?)
ほむらの知る限り、織莉子という人物はもっと恐ろしい人の姿をした何か、なのだ。
人を人とも思わぬ、冷酷で非道で執念深い、目的の為に徹底して少数を切り捨てる卑劣な敵。
のみならず必要とあらば、自分の命さえも切り捨てる側に数える、死を覚悟した者の強みを備えていた。
あの圧倒的な胆力を前にして、嘗てのほむらは襲い来る恐怖心とも必死に闘っていたものだ。
ほむらには、あの時対峙した怪物と、目前の整った容貌を悲しみに曇らせた同年代の少女が、どうしても繋がらなかった。
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