過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARマンがお送りします
[saga]
2012/03/25(日) 15:17:04.89 ID:rdb8npsf0
午前10時。昼にはまだ早いが、本当に呼吸と瞬き以外の何もしないというのは、流石に無理がある。
雑誌も読み飽きたほむらは予定を前倒しにして、昼食の下拵えでもしておこうか、と考え――米を買いに行こうと決めた。
先日の買い出しでは、食料品も数日分の量と種類を買い込んだが、精米は何しろ重量がある。
自宅とショッピングモールとの距離を考えると、筋トレとでも思わなければ米袋を担ぐ気になれない上に、
ほむら自身にもビルドアップの趣味は一片たりとも無かったので、常から米とペットボトルは近所で買い入れていた。
買い物袋を携え、経年劣化した木造建築を出て石畳を踏み締め、表通りには出ず近場にある個人経営の米屋へ。
建て付けの悪い横引きのガラス戸をガラガラと開けて店に入り、所狭しと積み上げられた袋の中から、どの商品がいいかとじっくり吟味する。
余り大きな物は要らない。ほむらは基本的に少食なので、2kg程度の袋を買っておけば暫くは保つ。
さて、品種はどれにしようかと選別するほむらだったが、よくよく考えれば米の味に別段拘りがある訳でもなく、
無難にコシヒカリでも買っておこうかと、真正面の黄色いプリントが施された米袋を手に取る。
注意して読むと、袋の表面にはゴロピカリと印刷されていたが、細かいことは気にしない。
名称の微妙さに目を瞑れば、不味くはないしコシヒカリよりも財布に優しい価格設定なので、エンゲル係数の低下に腐心するほむらにも大助かりだ。
右腕に2000グラム強の重みを感じつつ米屋を後にしたほむらは、寄り道をすることもなく帰宅した。
嗽手洗いを済ませ、引き出しから鋏を取り出し、黄色いパッケージの中身を米櫃にざざと流し込むと、あっという間に準備は整ってしまう。
今から調理に取り掛かるには些か早過ぎるが、白米を炊くだけなら別段困ることもない。
計量カップを使って炊飯釜に二合の米を入れ、水道の蛇口を捻って米を三度、水と共にざくざくと攪拌し、研ぎ汁を捨て、精米に新たな水を注ぐ。
水の量をきっちりと調節したら、後はタイマーをセットして待つだけだ。……炊き上がりの時刻は、正午。
炊飯を始めてから完了までに凡そ一時間。逆算して割り出した、浸水に必要な時間も考慮に入れると、こんなものだろう。
今の内に作り置きしておける物は纏めて用意してしまおう、と開き直ったほむらは、食材を粗方選んで調理台にずらりと並べた。
野菜が多数に、鶏の腿肉、菌類、それに数種類の調味料、又はそれに準ずる物が決して広くない調理用スペースを埋め尽くす。
まずは手軽に作れる物から。蕪を銀杏切りに分け、浅漬けの素に漬けて保存用パックに密封し、冷蔵庫へ保管する。
味噌汁の具材として、細切りにした大根と賽の目切りの木綿豆腐を化学出汁と一緒に煮込む。
その過程で、増える若布も適量パラパラと入れる。
乾燥剤が同梱されたお八つ用煮干しは、出汁の素になるだけでなく、調味もされているので風味を増し、結果味噌の量も減らせるので使い勝手がいい。
煮干しから出る灰汁を掬う手間さえ省ければ言うこと無しだが、それは贅沢というものだ。
大根に火が通って透明色になってきたらコンロを切り、後は余熱で温める。味噌を溶かし入れるのは、もう少し先だ。
次にボウルを複数用意し、各個に水を注いでおく。
牛蒡を束子で擦り、流水で泥を落としてから斜め切りにし、灰汁抜きに水に晒す。
蓮根は皮を剥いたら乱切りに。変色を防ぐ為、酢水に潜らせておくのもいいが、栄養価が落ち歯応えも変わるので場合によりけりだ。
干し椎茸は水に浸し、その際に戻し汁も捨てずに取っておく。椎茸が膨らんだら、柄を裂いて傘の部分は十字に切れ目を入れておく。
そして旬の具材、筍。一年の中でこの時季にしか味わえない、柔らかくて瑞々しい逸品が手に入った。
……そう、ほむらが今作っているのは春の滋味、筑前煮だった。
皮を剥いた筍も同様に乱切りにした後、水に晒して灰汁抜きを行う。
具材を水に漬けている間に、他の材料も切り揃えておく。人参や蒟蒻も、他の具材と同等の大きさに。
野菜を切り終え、鶏腿肉を一口大に分け、胡麻油を引いた鍋で炒め火が通ったら、椎茸の戻し汁と出汁の素を加え、根菜を始めとした他の具材も一緒に煮ておく。
この時、十分に柔らかい筍を使えない場合は、予め茹でておくのが望ましい。
暫く経ったら、醤油や味醂などを混ぜた合わせ調味料を加味し、ある程度水気が減るまでぐつぐつと煮詰める。落し蓋をしておくとベター。
その隙に、他の鍋を用いて湯を沸かし、蔕と筋を取り除いた莢豌豆を、柔らかくなるまで熱湯で約二分茹でた物を、仕上げの彩りに添えれば出来上がりだ。
昼まではまだ暫しの猶予がある。
ほむらは一通りの準備が済んでしまってから、そういえば髪を編んでいなかったわ、と思い出した。
元々三つ編みだった髪を今は解いているほむらだが、調理をするならこの長い髪は妨げになる。
繰り返しの日々の中、家事は自然と身に着いたが、多忙さを理由に蔑ろにすることも珍しくなくなっていた。
(……次からは、ちゃんと編み上げておこう)
二又に分かれた、腰まで届く見事な黒のロングヘアーは、嘗てまどかを救う為に、甘ったれた過去の自分への訣別をしたほむらの悲壮な決意の表れだ。
髪を編むことであの頃の決心を鈍らせたくはなかったが、今回に限ってはその必要も無い。
ほむらは、これは休息期間だ、と思うことにする。今はただ、コンディションを良好に保ち希望を繋ぐのだ。
正味な話をすれば、ほむらは強引にでも気が楽になる様に努めていた。
ソウルジェムの濁りが深刻な域に達している以上、過度の沈思黙考は身の破滅を招く。
答えの出ない悩みに悶々とするよりは、身体を動かしている方が遥かにマシだ。
……お昼ご飯を食べたら、部屋の大掃除でもしようかしら。
ほむらは、罅割れた壁に付着した染みはさて置き、引っ越したばかりで然程汚れも無い室内を見渡しながら、そう考えるのだった。
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