過去ログ - アンリ士郎「汝の欲す所を安価にて為せ!(キリッ」一同「へー」
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[saga]
2012/03/10(土) 21:50:51.01 ID:yheQES6i0
「ついて来なさい」
僧が言った。命令口調ではなかった。私は僧の背中を見ながら、堂の外に出る。
雪が美しい。
鈍色(にびいろ)の雲から白いかけらがこぼれるように落ちてきて、白一色の中に溶けこんでいく。
雪のひとかけらが光の色を宿している。光が姿をとどめるために、雪になったのだ。
僧は、後ろを振り返らずに歩く。素足に草履だが、踵が雪に埋まっては消え、また立ち現れる。くるぶしが桃色に染まっていた。
鐘楼の横を通るとき、甘い香りが匂った。私は立ち止まり、香りの源を探した。
やはり臘梅だ。まだ三分咲きくらいだろうが、白い雪をかぶりながらも、ひっそりと黄色い花びらを開いている。
「好きなんですね。この花が」
まるで私の足音を聞いていたように、初めて僧が向き返った。
「はい。梅よりも早く咲いて、匂いも豊かですから」
臘梅が好きだったのはサクラだ。冬に咲く花は何でも愛しいと、まるで年寄りみたいなことを言った。
あれは、もう先行きが短い自分の命を予感していたのだろうか。
僧は私の顔をしばらく凝視していたが、また歩き出す。
黒い僧衣の肩に雪がうっすらと積もっていた。
岩肌のむき出した断崖が、目の前にそびえていた。
二百メートルくらいの上方から、滝が段差をつくって流れ落ちている。
水量も豊かで、境内の見所のひとつになっている。
千日回峰行の際、この滝の裏側を必ず通るのだと、案内板に記されていたのを読んだことがある。
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