過去ログ - 鑢七実「ここは………どこかしら?」布束砥信「学園都市よ」
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789:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/02/04(月) 01:20:25.78 ID:ouorT+Ut0
ただ強くなりたい。強くなりたい。ただそれだけの理由だ。

普通なら『野蛮』と切り捨てられる理由かもしれない。だが、絹旗は“弱い”、か弱い少女に過ぎない。心も体も、ただ人より強いだけで、本当の意味で強い者からするとガラスの様に脆い。

それを知ったから、知っていたから絹旗は地上最強最悪最凶の鑢七実に挑むのか。

自らの力を顕示する様な野蛮な連中とは違う。あの、先日討ち滅ぼした無能力者狩りの連中とは違う。無能力者を守ろうとする武装無能力者集団の連中とも、任務の為なら汚い仕事を完全に遂行する真庭忍軍の連中とも違う。

己の弱さを知り、己の弱さを恥じ、それを真っ赤になるまで熱し、鎚で何度も何度も打ち、鍛えようとしているのだ。

自らを刀とするのが虚刀流。それを扱うのが鑢家。その弟子入りを願う少女は、自らを刀としたい少女は、自らに鎚を打とうとしている。

自らを刀とし、自らが鍛冶屋となって自らを鍛え抜く。

なんと純粋で、綺麗で、透き通った、美しい理由だろう。

それが武道の、武人の最果てなのではないだろうか。この世全ての武闘の思想の根本は、自分を鍛えようとする心にあるのではないだろうか。

絹旗最愛と言う少女は今、その根源を体現している。己を恥じて、己を鍛え、己を強くしようとしてる。それはもガラスなのではない。鉄よりも硬いダイヤモンドだ。

とがめは、腹を決めた。七花を見上げる。


「七花。絹旗は、私たちが思っていたよりも向上心がある人間であったぞ」

「ああ、そうみたいだな」


七花も、同じことを考えていた。


「腹を、括るしかなさそうだな。とがめ」

「ああ」


―――その意思、確かに見届けた。


「いいだろう、ならば思う存分戦っていけ!! 絹旗ぁぁあ!!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「――――――ゥワァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


右拳が流星の如く突き進む。目標地点は七実の左テンプル(こめかみ)。この一撃に自らの命の全てを賭ける。有り金全てベットに変えて放り投げてやった。


―――もう、この一発に賭けるしかなかった。


神如き力を持ち、それを振るう者……真の化物、真の魔王、鑢七実に、神か魔王なる者に、正拳を突き立てる為だけに!

今まで、一発も当らなかった……。だが、この一撃は当たる。直撃する。間違いなく当たる。


「直撃!!」


鑢七花はそう叫んだ。なぜなら七実の体は宙に浮かんでいる。幾ら如何なる化物でも、背中に翼が無い限り空中では身動きは取れまい。


(い、行けるか!?)


絹旗はここで奇策に打って出たのだ。

七実は失策をしてしまったのだ。それは『忍法足軽』という真庭蝶々の忍法を常に発動させていたからだ。だから今までもさっきも、攻撃を闘牛士の様にひらひらと回避する事が出来たのだ。


(確信が持てたのは、タックルをしたとき―――)


七実が絹旗のタックルを回避した方法は、肩に手を置いて跳び上がり、手を支点にして回転する方法……。その時、肩には七実の手の感触だけがあって、“体重が全く掛かっていなかった。”

恐らく、今までの七実の攻撃は全て『忍法足軽』によって質量を減らされて威力が最小限だったのだろう。元より七実の筋力は怪力と呼ぶには足りない程の馬鹿力だ。

忍法で威力を減らしていなければ、絹旗は最初の一撃で死んでいる。


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