過去ログ - 鑢七実「ここは………どこかしら?」布束砥信「学園都市よ」
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[sage saga]
2013/02/04(月) 01:37:59.65 ID:ouorT+Ut0
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観客の中で、一人がスタンドの後ろで嘔吐する。世界広しと言えど、格闘技どころか戦争中の白兵戦でもここまで人の形を歪ませる事は出来ない。
嘔吐した彼は呟く。
「絹旗と言うガキ……まだ生きている。生きてやがる。いや、どうやったら生きていられるのか不思議でならねぇ」
普通なら出血多量で失神しているか死んでいるか、腕を切り落とされたり大腿骨をへし折られたりして痛みのショックで失神するか死んでいる筈なのだ。
なのになぜ? ―――と。そしてこうも呟く。
「……バケモノだ……。バケモノを倒す為にやって来た小娘だと思っていたら、小娘もとんだバケモノだったじゃねえか……。やっぱり、学園都市の連中はイカれてやがる。ここは子供の学習機関なんかじゃねぇ……。バケモノ生産工場だ!!」
そうだ。彼女は化物だ。そして俺たちも化物だ。怪物だ。フランケンシュタイン博士よりも質が悪い怪物育成機関。
垣根帝督はその声を耳にしながら、心の中で頷いた。
これはある資料からのデータだが、絹旗最愛は赤子の頃から精神がイカれた研究者に育てられ、物心付く頃には脳を弄繰り回され、幼少時から研究の実験台として死と隣り合わせで生きていたらしい。
『闇の五月計画』
それがその研究の名だ。暗部では有名すぎる話だから今は端折るが、結局はそんな彼女は化物だ。人の体をした、人の皮膚を纏った怪物だ。
そんな怪物もそうだが、垣根は別にそう言う境遇の人間だけがそうだとも思っていない。
偏見的な言い方だが、学園都市の超能力者は、特に大能力者・超能力者は兵器として扱われる節がある…と考える。そもそも学園都市の(頭がイカれた)著名な学者どもは子供をモルモット呼ばわりしている。―――そいつらの方がよっぽどバケモノだ。
とにかく、学園都市に置いて、そう言う面では学生は物扱いされるのだ。何より、実際、風紀委員だって自らの能力を武器にして戦わせている仕組みになっている。
(学園都市はイカれてやがる。木原も、アレイスターも。そんなクソヤロウが統治する地獄の様な街だ。そんでその地獄で育ってきた俺たちは鬼だ。バケモノだ。だが、ただのバケモノじゃねぇ)
それでも人の感情を持っている。
笑い、泣き、怒り、喚く。時には暴走するほど恋をし、時にはシュンと反省する、この街の悪鬼共はそんな少年少女に過ぎない。
そもそも少年少女たちをバケモノと蔑むこと自体が間違いだ。
人が人たらしめるのは、そこに『「意思」があるかどうか』だ。その意思が覚悟を持っている。意思とは心ではないだろうか。そして意思がある行動は、自然と魂が宿る。
だが、意思も無く、覚悟も無く、心無い、ただ淡々とした行動は、魂など宿らない。
そんな意思のない人間など、魂が抜け落ちた人間と同じだ。
いや、魂の無い人間など、それは人間ではない。人形だ。ただ殺戮を繰り返す『バケモノ』だ。あの『微刀 釵』と大して変わらぬ殺人兵器だ。
そこが、学園都市の怪物と、ただの殺戮を繰り返す人形の違いだ。
―――そんな、魂がある怪物、絹旗最愛は諦めない。
どんな地獄の底にいても、諦めない。蜘蛛の糸ほど細くて、いつでも切れそうな希望にだって縋る。
故に奇蹟が起こる。例えそれが100万の罪人の内、たった一人だけを救う蜘蛛の糸だとしても、確率が限りなく零に近くても、絶対に奇蹟を起こすまで諦めない。
「つっても、希望なんてチャチなモン、見るのも諦めちまった俺が言うタチじゃあねぇわな」
垣根は馬鹿馬鹿しく呟く。
垣根から見て、絹旗は青く見えた。真っ直ぐで諦めないという事は、駄々を捏ねる諦めが悪い餓鬼と同じに見える。
だが、それが楽しく思えた。
もし、もっと前に……例えば最初に絹旗が倒れていた時に彼女が七実と戦うのを諦めていたら―――七実は絶対に命乞いをする少女の問答無用で首を刎ねていただろう。
(――――諦めが人を殺す……のか)
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