過去ログ - 鑢七実「ここは………どこかしら?」布束砥信「学園都市よ」
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929:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/02(火) 03:19:14.62 ID:2lbVeYvl0
蝙蝠は楽しそうに笑う。『鑢七花』と言う名前に反応したのか。


「きゃはきゃは」


狂犬は悔しそうな顔をした。


「楽しそうね。奇策士ちゃんに敗け、絹旗ちゃんに敗け、おまけに全財産を失ったせいで、一文無しでこんな怪物揃いの街に放り出されているのに」

「いや、それだからだっつーの。狂犬、危機を愉しもうじゃねぇか」


と、蝙蝠の弁。


「そうしねぇと勿体ねぇじゃねぇか。危機は愉しむもんだぜ。そんな心を持ち合わせていないと、この商売やってられねぇよてぇの。
つーかよ、金はお前が乗っ取った奴らの財布から抜き取ればいい話じゃねぇか。一人一万だったら五百万だ。それだけで何もしなくても一年は持つ。定期的に集金すれば、残りの『お前』ら千五百人、余裕でまかなえる。あとはこの檻の中の鬼ごっこ、何日生き残れるかだ」

「……………もって一か月…。いえ、半月でしょうね。最悪、明後日でも誰かが消えるかもしれない」

「そんなにも早ぇのか?」

「ええ、戦闘で何人かに見られたし、風紀委員や警備員に捕まえられかけたから、もう……」


それは、急な坂に小石を転がすと止まらないのと同じだった。

一旦おおごとに成れば、その小石は延々と坂を転がり続ける。続けさせられる。何か高い壁にぶつかるか、池に落ちるまでは。

一波乱起こすという事は、そう言う事である。


「………もう、後戻りできねぇな」


笑いながらの蝙蝠。愉しそうな表情だが、ちょっと不安げな顔もある。狂犬はそれに頷く。


「ええ、きっと各地で起こっている戦闘は、警備員にも風紀委員にも伝わっているだろうから、何らかの調査はある筈。『青い刺青をした集団が子供たちを襲っている』ってね。すぐに狩りが始まるわ。この街の警護は優秀だし。なにより、暗部が……奇策士ちゃんたちが黙っている訳がない」

「どうするよ」

「どうするも何も、戦うしかない。逃げるにしても、ここは巨大な檻の中。鬼ごっこをするにしては、私たちの分が悪すぎる」

「やっぱり、無茶だった……なんて言わねえよな? きゃはきゃは」

「ま、冷静に見ればそうなるね。この時代に来た時、ほとんどの体が“腐っていた”。一騎当千の戦士たちだと言っても、あれじゃあ戦えるものも、戦えない。ほっといて死なせるには、戦力を削るには勿体ない。こうするしかなかったとしかないわよ」


言い訳の様だが、確かにそうしかできなかった。

これは賭けだった。何人かは……およそ五百人の狂犬は戦闘不能だった。奇策士とがめには二千人の忍者集団と言っていたが、実質は千五百人しか動けなかったのだ。

この一週間でその五百人が、新たに超能力を宿す体を手に入れたのである。

無論、とがめはそのことを知らない筈だ。あの敵と見た人間を倒す事しか考えない鬼畜は、恐らく学園都市の超能力を手に入れる為だけの犯行だと勘違いする筈だ。

しかし、蓋を開けてみれば学園都市よりも歴代の真庭狂犬の能力の方が強力なのが多かった。大能力者たちは、そうでもなかったが、数からするに、戦力は若干減った。


「……チッ」


それに、学園都市の生徒はまだ未発達の子供だ。体術・肉体は著しく劣る。超能力でそれは補えるものの、諜報が取り柄の川獺と違い戦闘専門の忍者である狂犬は、それが気に喰わなかった。


「なあ、思ったんだけどよ、なんでお前らの体は腐っていっちまうんだ?」


蝙蝠はそんな素朴な質問をする。それに反応した狂犬は黒い髪をなびかせて公園のベンチに腰掛けた。


「本来、一つの体に二つの魂があってはならないのよ。悪霊憑きや狐憑きとかでよく聞くけど、要するにそれは一つの体に二つの魂を持ってしまっている状態なの。それで、聞いたことが無いかしら。悪霊に取りつかれた人間は心身ともに衰弱していくって。私は刺青が本体の幽霊みたいなものだから、『忍法狂犬発動』は悪霊憑きに該当するの」

「なるほど。要するに、満水の一つの器に別の液体を一緒だけ入れたら、どっちも一緒だけ零れちまって、器が崩壊するってことか」





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