8:1[saga]
2012/03/13(火) 02:25:40.37 ID:LvNuVMw7o
妹「貴方と交わす言葉は持ち合わせておりませんので、ご遠慮します」
空気が変わった。
鈴を転がすような妹の声。
聴く者を夢の世界へ誘う如くの、幻想的な美しき音色。
影女の手は止まり、友は床に落下した。
妹「まずは私の拘束を解いてもらえますか?」
従ったのは友だった。
操り人形の様に、言われるがままに拘束を解く。
虚ろな瞳に妹の姿は映らない。
彼女の声に魅了された今の友には、紡がれる言葉だけが全てだった。
妹「……ずっと同じ姿勢だったので疲れました」
誰一人口を開こうとしない。
壁が床が天井が彼女の声に聞き入り、異常な程の静寂が辺りを包み込む。
妹「罰として、永遠に苦しんでください」
妹が肉男の顔を覗き込んで笑顔で伝えた。
肉男「う……ううう……ああああああ!!」
肉男の全身から脂汗が吹き出す。
たっぷりと蓄えられたぜい肉はぷるぷると震える。
妹「苦しいですか? じゃあ、死んでも良いですよ」
にっこりと妹が笑った。
瞬間、肉男は真っ黒い気体を噴出させ、消滅した。
黒い霧は天井で渦を巻き苦しい、苦しいと呻き始める。
妹「鬱陶しいので他所でやってください」
すっと天井に吸い込まれる様に黒い霧は去った。
苦しいと一言残して。
妹「……兄さん、大丈夫ですか?」
倒れたままの兄の傍らにしゃがみ込み手を握る。
握り返してくる気配はない。
妹「……お兄ちゃん、お兄ちゃん起きて」
ユッサユッサユッサユッサユッサ
兄「はっ!? こ、ここはどこだ!?」
友「むっ!? ここはどこだ!?」
影「あれ……? ここどこですかぁ……?」
妹「お兄ちゃん!!」
兄「おふうっ!? いきなり抱きつかれたぞ! どうなってるんだ!!」
友「羨ましい……」
影「羨ましいです……」
妹「お兄ちゃん、全然起きないんだもん……死んじゃったかと思った……」
兄「お、俺も少しの間、天国に居たような気がする……」
妹「うっ、ううー……」
兄「わー!? な、泣くな! ほら、お兄ちゃんはこの通り無傷だからさぁ!!」
妹「ぐすん、ぐすん……」
第一話『はじまりはいつも意味不明』終了。
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