過去ログ - 魔法少女隊R-TYPEs FINAL2〜ティロ・フィナーレの野望〜
1- 20
526: ◆HvWr2kWl99Dz[saga sage]
2012/05/24(木) 22:27:10.50 ID:9hN7J/Nz0
「どうやら近くの人たちが気付き始めたみたいだ。急いだほうがいいかもしれないね。
 見られたらきっと困るだろうし、君は早く行ったほうがいい」

嗚咽に混じって、人の声やどうにも騒がしい気配が近づいてきた。

「しばしの別れ、だな。あたしはこっちで頑張るから、あんたも頑張ってくれよ。
 ……まどかを頼んだよ、スゥ」

最後にもう一度スゥを抱きしめて、詢子はその身を離した。
頷き、スゥは涙を払って手を上げた。それに応えてグランドフィナーレが更に接近する。
キャノピーが開き、まるで機体から湧き出るかのように生じたタラップに、スゥは身を躍らせた。
たちまちの内にその身はキャノピーの中に吸い込まれ、そして、グランドフィナーレは飛び立っていく。
そして鋭い光の尾を引いて、その姿はたちまち空の彼方へと消えていった。

「……行っちまったね」

「そうだね、ママ。……なんだか楽しそうだね。久しぶりに見た気がする、そんなママの顔」

確かに知久が見た詢子の横顔は、力強くそして不敵な笑みを浮かべていた。
それはあの日まどかと別れて以来、一度として見ることのない表情だった。

「そりゃ笑いたくもなるさ。まどかはきっと帰ってくる。そうしたら家族が増えるんだ。
 まったく、これはあたしも頑張らなくちゃいけないね。新しい家族に、みっともないとこ見せられないだろう?」

その胸に宿った僅かな希望。それは僅かでも力強く、詢子の中で輝いていた。
そこにはもう、絶望に日々蝕まれ続けるだけの女性の姿はなかった。

「さあて、うるさいのが来る前にさっさと退散しよう。そして、ゆっくり寝よう。
 今日はゆっくり寝られる気がするよ。……それとも、一緒に寝ようか、知久」

思わずぞくりとするほど艶のある声で、詢子は知久の名を呼んだ。
まどかが物心つくようになって以来、そんな風に呼ぶことは滅多になかったのだが。

「参ったな。まどかが帰ってくるころには、もう一人家族が増えることになるかもしれない。
 ……行こうか、詢子さん」





そして二人は連れ添って、押し寄せようとする人並みより早く家へと滑り込んだ。
以降の鹿目家の家庭事情については、恐らく特筆すべき事項ではないだろう。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
567Res/572.13 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice