過去ログ - ペルソナっぽい悪魔設定のシェアワでお話を書いてみたい人集まれ
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249:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/21(月) 17:11:58.59 ID:fxP+1H1go

 次の日。私は翁と対峙していた。肩の力を抜き、なるたけ隙のないよう構えをとる。
 彼がどれほど強いのかを知りたかったのだ。
 ちなみに翁というのは私が決めた彼の呼び名だ。特にそう呼ぶことを止められはしなかった。

 私は空手歴が結構長い。
 かれこれ十年近くになるだろうか。我ながら長く続いている。
 記者としての仕事でもそちらの方面の取材が多い。翁の事を知ったのもその関係でだった。
 そのときに決めたのだ。絶対にこの武人に手合わせを申し込むと。
 鋭く息を吐いて、踏み込んだ。

 ……結果から言うと、私は一本も取ることができなかった。
 あれから何本も何本も、納得がいくまで(というか諦めがつくまで)手合わせしたのだが、駄目だった。
 なんで負けるのかも分からないほどに実力に差があった。

 やはりお強いですね。笑って言ったが、彼は無表情を崩さなかった。
 私は言葉を続けた。なぜ、こんな山奥にいるんですか。なぜ失踪なんて真似を。
 彼はわずかに視線を落とした。

 しばらく木々のざわめきの音しかしなかった。
 沈黙が長引いて、私は垂れてきた汗をぬぐった。その時翁が口を開いた。
 君。強い、とはどういうことだと思う。
 翁のようなことだと。と私は即答した。

 翁が笑った。ただ、それは酷く苦々しく、笑いというよりも顔をしかめたという方がどちらかというと近かった。
 かつて。と翁が言う。かつて、私は恐れを抱いた。と。
 闘いに明け暮れる日々。勝利をおさめてはいたものの、いつか敗北することは、続ける以上明白だった。
 それは当然で、避ける手段など人が持っているわけもなく、持っていていいものでもなかった。

 だが、私は望んでしまった、と翁は空を見上げる。苦しげに。



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