過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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103: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:24:58.37 ID:h7sEMOtHo
呼吸さえ忘れて、切り結ぶ中で。
遂に、勇者の剣がワルキューレの防御を跳ね除けた。

大きく後方に弾かれた斧槍に引っ張られて、ワルキューレは体勢を崩し、無防備な姿をさらけ出す。
がら空きの胴へ向かい、左下段から引き起こすような軌道で切り上げる。

しかし―――刃が軌道の半分も描かぬうちに、右側から、衝撃が頭を突き抜けた。
視界がいきなり90度近く回転し、直後に勇者の眼に映る風景から、精彩が失われていく。
かすかに見えたのは、フォロースルーに入ったワルキューレの背。

猫科の獣にも酷似したしなやかさで、彼女の左脚が勇者の頭を捉えたのだ。
無駄なく鍛えられた全身のバネを使い、会心の一撃をもたらした。
脚甲の重さも加わり、脛がもろに入ったのだ。
たとえ常人だったとしたら、首が吹き飛んでしまいそうな衝撃。
それでも――ワルキューレは、勝ち誇らない。
手応えは十分だったというのに、それでも不足であるかのように。

蹴りの勢いのまま、身体を回転させて勇者へと向き直る。
やはり、勇者は立っていた。
それも、「瞳を覗き込めそうなほど、間近に」。

勢いをつけた膝が、今度はワルキューレの胴体を捉える。
腹部と胸部の中間を狙った膝は、胸甲越しに内臓へ衝撃を届けた。
跳躍の勢いのままに放たれる膝は、槌矛の一撃にも劣らぬ威力を生み出した。

苦い煙が口内を満たすような感覚に、ワルキューレの視界が揺れる。
チカチカと明滅する視界の中、熱い物が、文字通り喉まで「こみ上げた」。

勇者「……まだ、やるか?」

得物を持つ手を下げ、その場にえずく彼女へ問う。
自分の方もぐらぐらと揺れるような感覚が続き、足取りがだいぶ怪しくなっているというのに。
強がっているというよりは、心底彼女を気遣うような声色で。




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