過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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102: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:23:37.30 ID:h7sEMOtHo
ばしゃぁ、という盛大な水音を合図に、「決闘」は再開された。
降りしきる雨の中を、黄金の武具纏う「戦乙女」と、暗黒の剣を握る「勇者」が切り結ぶ。

雨粒を裂いて、ワルキューレの斧槍が左から右へ、横薙ぎに襲い来る。
首元を狙って放たれた初撃を大きく身を反らせて空振りさせると、
引き戻された斧槍がすぐさま、腹部を狙って突き出された。

恐ろしいほどの速さで繰り出された突きへ、柄尻を用いて切っ先を逸らす。
あまりの速さゆえ、逆に横から加えられる力に影響を受けやすいのだ。
腹部を狙うはずだった斧槍の突きは彼女から見て左へ逸れ、先ほど綻ばせた脇腹部分を、更に削り取る。
僅かな熱とともに勇者の脇腹に線状に血が滲む。

浮かんだのは苦痛の表情でもなく、しくじったという面持ちでもなく、昂揚を孕んだ笑顔。

―――久々に刃傷を負ったな。
―――愉しい!

心臓の鼓動は、天井知らずに跳ね上がる。
落ちる雨粒一つ一つが空中で止まったようにすら見え、
それを弾き飛ばす攻撃の応酬は、舞踏にも似て美しく感じた。


髪から、鎧から、額冠の翼飾りから雨粒を滴らせ、斧槍を自在に操る、「戦乙女」。
その表情も、勇者と同じく浮き立つ感情をありありと伝えていた。

―――この男は、全力をぶつけてもなお手に余るのか。
―――なんと、気持ち良い事か!

勇者と意識を共有するかのように、口元が歪んでいく。
どれだけ技巧を凝らし、晦ましを織り交ぜた攻撃を繰り出しても。
眼前の相手は、痛快なほどに防いでくれる。
本気を出して戦える、圧倒的な快感。
本気を出しても届くかどうか分からない、強さ。
ゾクゾクと背筋を遡るのは、性的恍惚よりもさらに強い、紛れもない「快感」。
父親にじゃれる子供のように、勝てないと分かっている相手に全力で挑む、とてつもない安堵と、解放感。



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