過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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90: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:11:59.63 ID:h7sEMOtHo
地下牢へと続く暗い螺旋階段を下りながら、堕女神は思う。
「彼」は、どんな半生を送ったのだろう、と。

――「彼」は、優しい。
飢饉に喘ぐ隣国へ、打算の欠片もなく手を差し伸べた。
その物腰は、そうあるのが当然であるかのように自然だった。

――「彼」は、強い。
選りすぐりの淫魔の兵士を10人、同時に相手をした。
切創の一つも作らず、そして作らせず、その10人を全員沈めた。

――「彼」は、慈しみ深い。
愛の残滓を振り払えず、夜毎涙していた自分を、優しく慰めてくれた。
一介の使用人から自分に至るまで、その愛は深く、そして広い。


その一方で、彼にはどこか、厭世的な部分がときおり見受けられた。
もしも誰かが、理由を携えて彼を殺しに来たのなら。
抵抗せず、その刃を受け入れてしまいそうな危うさがある。
彼女の危惧は、そのまま、現在のそれに当てはまってしまった。

地下牢の底へとたどり着くと、どこか違った気配が感じ取れた。
ゆるんだ螺子を巻き直したかのような、良く知る「戦乙女」の気配。

堕女神「起きていますか?」

ワルキューレ「……ああ」

堕女神「早速ですが、これを」


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