過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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96: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:19:05.71 ID:h7sEMOtHo
凍りついたように動かない脚に気合を入れ直し、振り返る。
彼女の後方、僅か2mほどの場所に勇者が立っていた。
心臓を狙い、「届かぬ距離」から剣を突き出したままの姿勢で。

晦ましの殺気を、背中から浴びせた。
無防備な背、それも斧槍が不自然に地を突いた意識の間隙を狙って。
あまりにリアルすぎる感覚ゆえ、彼女は「殺られた」と思ってしまった。
それ故、内臓にまで錯覚が及び――実際に、口の中に少量の血がこみ上げた。
本来であれば考えられないほどの、過敏すぎる反応。
それは練り上げられた「勇者」の殺気と、戦いの中に身を置き続けた「ワルキューレ」の感性の合致による。

勇者「これも……一度言ってみたかった台詞なんだが」

口内にたまった血を吐き出すと、すぐに彼女は気を取り直す。
―――殺されては、いない。
そう認識すると、再び力が湧いてきた。
加えて、舐めた振る舞いへの怒りさえも。

勇者「……『貴様の力は、その程度か?』」


―――ぷつり、と何かが切れた音がした。
羞恥、屈辱、そして怒り。
振り切った感情の渦は、そのまま斧槍の先に込められた。

充満した殺気に気付くと、勇者は剣を両手で握り、中段に構える。
これより先は、刹那の攻防が無限近くに続くと判断した。
勝負がつくまで、恐らく瞬き一つも許されない。
彼女は自分を殺しにくるし、自分もまた、彼女を殺さずにいられるか分からない。
久しぶりの―――懐かしの、”死地”がやって来た。




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