過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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99: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:21:52.80 ID:h7sEMOtHo
刀身に左手を添えて兜割りを受け止めたものの、危険な膠着状態に陥ってしまった。
耐えている間にもワルキューレの手には力が込められ、捻じ伏せようとさらに重みを増す。
この状態で魔力の剣を繰り出されれば、剣を使っての防御も、雷による迎撃も行えない。
それが無かったとしても、真綿で首を絞めるように、じわじわと押し潰されるという末路もある。

ワルキューレ「訊かせろ…!」

勇者「……答えるかは知らないけどな」

ワルキューレ「貴様……何者なんだ!」

勇者「何者だと思った?」

ワルキューレ「……はぐらかすな!」

さらに、斧槍へ重みが乗せられる。
勇者の慇懃な微笑みが苦悶へと化け、足が更に深く沈み込む。
剣を握る右手は、張り付いたように不気味なほどに動かない。

勇者「目的はそれか?……訊きたいなら、教えてやる」

ワルキューレ「…早く言うんだ。貴様は一体……何なんだ!」

勇者「……そう、だな」


一切の動きが、止まる。
勇者も、ワルキューレも。
震えながら斧槍を受け止める剣も、それをへし折らんと押し込む斧槍も。
互いの息遣いも、時が止められたかのように静まる。
その中で勇者だけが、表情を変えてみせた。

ワルキューレだけにしか見えない、あまりにも寂しく、抜け殻のような微笑みへ。


勇者「……世界に、使い捨てられてしまった『人間』かな」



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