946: ◆72cuWZiGoBc/[sage]
2012/10/14(日) 11:29:14.63 ID:CqpQadLAO
結局、765高校までの通学路を、2人並んで歩くことに。
だが何から話を切り出せばいいのかがわからず、しどろもどろに言葉を発した。
P「『許嫁』の話、昨日親父から聞きました」
貴音「……そうですか」
P「俺、何も知らなくて、昨日も貴音さんから会いにきてくれたのにろくな話しも出来なかった…」
不意に、思ったままに言葉を発していた口に細い指が当てられる。
貴音「どうかなにもおっしゃらないでください」
少し悲しげに、瞳に憂いを湛えた貴音さんの指が、離れる。
貴音「わかってはいたのです。父からは“本当は成人してから”という前提のもと、お話を伺ったのですから」
言いながら、内胸のポケットから取り出されたパスケース。
開かれた中には、俺だと思われる赤ん坊の写真が入っていた。
貴音「夢見がちだった、まだ空想や物語に胸を躍らせていた女の子には、『許嫁』というものがどれほど素敵に感じたのか。今ではもう、思い出すことも難しいほどに昔のことですが」
また、大事そうに、写真を胸ポケットにしまう。
貴音「あなた様」
P「はい」
貴音「私は、あなた様が好きです」
歩みは止めずに、けれど真っ直ぐにこちらを見つめて、彼女は言った。
貴音「ですが、だからと言ってあなた様が私を好きになる理由は無いのです」
P「な、なんでですか…」
貴音「私も、あなた様も、等しく人間。よく思うところもあれば、わるく思うところもありましょう。そんなとき私は、あなた様を縛る鎖にはなりたくはありません」
“許嫁だから好きでなくちゃいけない”。
“むこうが好きだからこちらも好きでなくちゃいけない”。
そんな思考に陥らないようにと、貴音さんは言った。
……なんだこれ。
なんで俺はまた、貴音さんに気を遣わせているんだ。
俺は俺の言葉を、俺の気持ちを伝えたくて話しがしたかったんじゃないか…!
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