11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/04/09(月) 00:24:12.59 ID:Bm6Pf+8o0
この島は暖かいが、空腹は寒さを伴う。
私の身体は悪寒を感じ始めていた。
海に投げ出され、かなりの時間が経ったのだ。当然だろう。
『……父さん、母さん』
貴重な私の羽を食してみようなどと、馬鹿な考えが頭をよぎる。
ついに私は、頭まで回らなくなってきたのだろうか。
『ルピィ…ああ、ルピィ…』
死ぬ前にまた、一目だけでも彼女を見たかった。
美しく揃った羽根。傷一つない、高潔な長く真っ直ぐなクチバシ。
何度、彼女の細い喉を遠目に長め、想いを巡らせただろう。
幼い時からの私の憧れ、ルピィ。
やはりルピィは、私にとっての高嶺の花であったのか。
決して届かない花に手を伸ばしてしまったがために、このような事になったのか…。
「……あの」
錆びた金属の番が控えめに鳴り、後ろから小さな声が聞こえた。
首だけを後ろに振り向かせると、そこには先程まで私を威嚇していた現地魔族がいた
「あなた…悪い魔族じゃ……ない?」
『…ああ、私を、歓迎してくれるのか』
「何を言っているのかわからないけど…私の事、食べない?悪い事、しない?」
『お願いだ、私を助けてほしい……どうか、どうか』
クチバシを両手で押さえ、額を地面につける。
私はツメもクチバシも使わない。だからどうか、私に力を貸してくれないか。
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