50: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:16:50.34 ID:gQCy6oSp0
3人は暗がりの中を歩いた。先頭はキリカで真ん中が織莉子、後ろには巴マミが尾いている。
どろどろとねばついた汚水が膝上まである排水溝のような真っ暗闇のトンネルで、織莉子の創りだした水晶球がランタンのように輝いている。
当然、全員の衣装は既にぐちゃぐちゃで、白、黒、黄色を基調としたそれぞれの格好は見るも無残な有様と成り果てていた。
嗚咽しそうな臭気に全員が顔をしかめる。
この状況に悪態の一つも突きたくなるのが人情というものだろうけど、残念ながらそんな事をすれば口いっぱいにこの色すら付いていそうな悪臭を取り込むことになる。
テレパシーを用いて意思疎通を図るまでもなくそれは共通認識として全員の意識に在り、そのせいで全員は終始無口だった。使い魔は、まだ出ていない。
遥か向こうにトンネルの終わりが見え始めた頃合いになって織莉子が口を開いた。どこから出したのかハンカチで鼻を押さえながらのことだった。
「今回は、基本的には私たちに任せて欲しいの」
「どうして?3人もいれば、大抵の魔女は楽に倒せるでしょうに……」
「乱戦になって、そのどさくさに紛れて貴女を攻撃しようとしていると、思われたくはないの。未だ貴女は私たちに信を置いてはいない。
貴女と協力を結ぶためには必要な事だと考えるわ」
「けれど、やっぱり心配だわ、まだ1週間かそこらなんでしょう?
ちょっとした油断がそのまま死に繋がるのが魔法少女なのよ、2人のチームとはいえ、魔法少女としてのキャリアの長い私が、ただ黙って見ているというのも……」
マミは食い下がった。というのも、この二人の強い絆を見るにつけ、マミの中にしようのない疎外感が生まれていったからだ。
マミはこの二人に混ざりたいと思った。
道中キリカが喧伝したように、素晴らしい芳香の漂う薔薇の園に、愚にもつかない事で笑いあいたいと思ったからだ。
巴マミという人間が、他者にこれほどに執着することはとても珍しい事だった。
「ハッ、あんまり見くびらないで欲しいね、黄色!織莉子の魔法と、私の魔法、二つが合わさった私たちは無敵なんだ、そうそうやられはしない!」
「確かに、未だ私たちはキャリアが短い。生まれたての雛が、お尻に卵殻をくっ付けたまま動き回っているような状態ね。
それでも、その雛鳥たちは試行錯誤してどうにか生き延びようとしているわ。過大な評価はもちろん危険だけれど、あまり過小評価されるのも面白くないものなのよ。
……私たちは、冷静に、そして出来る限り合理的に、魔女を狩ろうとしてきた。けれど客観的には、少なくとも先達の目線から言ってどの程度の位置にいるのかは分からない。
今回貴女に戦闘の不参加を要請するのは、それを見て評価してもらう、という狙いもあるの。
それに、貴女が私たちの戦いぶりを客観的に見るという事は即ち、貴女が私たちの戦闘の欠陥を見つける事にも繋がるわ。
もし貴女が私たちと敵対しようと言うのなら、その穴を突けば良い」
「……そうまでして、私の信頼を得たいというの?自分たちの弱点を曝け出してまで?」
「でなければ"あれ"を阻止する事はできない。絶望の夜を超えるには、どうしても貴女と言う存在が必要なの。
私たちは貴女に、敵意がない事、裏切るつもりなどない事を証明する必要がある」
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