5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]
2012/04/29(日) 13:21:15.05 ID:NtxCfnkio
  
 唯「……あのね」 
  
 澪「……ん?」 
  
 唯「………淋しかったんだ」 
  
 澪「………」 
  
 唯「よく、わからないけど。誰のせいとかそういうのじゃなくて、ただ、なんか淋しくて、それだけなんだけど……でも」 
  
 澪「うん、いいよ。大丈夫」 
  
 抱き締めたまま頭を撫でてやると、安心したかのように私に少し体重をかけてくる。 
 しばらくそうしたまま、唯の言葉を私なりに解釈してみる。 
  
 淋しい。唯はそう言った。 
 要はホームシックなのだろう。唯らしくないようで、唯ならありえそうだ、とも思う。 
 いつも元気で悩みのなさそうな唯らしくはないけど、ずっと一緒にいた憂ちゃんも、ずっと隣にいてくれた和も、ずっと可愛がってきた梓も、今の唯の近くにはいないんだ。 
 ずっと一緒にバンドやってきた私達でさえも、今の唯とあまり長く一緒には居られない。学部が違う、それだけで。 
 そんな環境に対する戸惑いが、唯の心に淋しさとなって影を落としたなら筋は通る。 
  
 澪「……落ち着いた?」 
  
 唯「……うん」 
  
 澪「そうか」 
  
 唯「………」 
  
 澪「………」 
  
 唯「………」ギュッ 
  
 澪「……いや、まぁ、確かに抱き締めたのは私からだけどさ」 
  
 唯「……もっと、いっしょにいたい」 
  
 澪「ん………」 
  
 唯にそう言われて、拒める人などいるはずがない。 
 和も言っていた。唯は何でも許してしまいたくなるような不思議な魅力を持ってる、みたいなことを。 
 和でも、私でも、最近知り合ったばかりの晶達でも、それは否定できないだろう。 
  
 唯「……ごめんね」 
  
 澪「…謝らなくていいよ。私なんかでいいのかのほうが心配なくらいだ」 
  
 唯「……みおちゃんがいい」 
  
 澪「………そうか」 
  
 そう言われて、少なくとも確実に心のどこかで私は「嬉しい」と思った。 
  
 前述の唯の魅力と、私がいい、と言われて嬉しく感じてしまった私の心。 
 その二つが重なって、何も見えなくなってしまった気がした。 
  
 まだ少し涙で潤んだ目をした唯が、私をじっと見上げている。切なげなその顔以外、何も見えない。 
 切なげな、怯えるような、求めるような、縋るような、そんな表情以外は。 
  
 唯「みおちゃん……」 
  
 澪「……一緒に寝ようか、唯」 
  
 唯「えっ……?」 
  
 澪「へ、変な意味じゃないけど。でも、淋しいなら、それくらいは……と思って」 
  
 唯「………うん。ありがと、澪ちゃん」 
  
 そう言って、小さくでも笑ってくれる唯が見れて、よかった、と心から思った。 
 私が唯に笑顔をあげられた、そのことがたまらなく嬉しかった。 
 特に大したことはしてないのに、私が普通にしてあげられることをしただけなのに、唯は喜んでくれた。 
  
 それが、本当に嬉しかった。 
  
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