過去ログ - 貧乏神「私がメイドですかッ!?」
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29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/05/05(土) 13:10:51.72 ID:VFxwHF9DO
おろろんおろろんと瞳に涙を浮かべながら貧乏神が命乞いをする。
しかし、その様子が楽しいのか、人形は口元を吊り上げてイタズラっ子のような笑みを深めるだけだった。

人形「どうしようかしらね? あなたが壊したガラス窓に花瓶にツボ、結構高くつくし……」

貧乏神「だから、それは私のせいじゃ……へぷしっ!」

貧乏神がチェス駒たちに押し潰されたまま小さくクシャミをした。

人形「あら? どうしたの?」

貧乏神「うぅ、雨で全身びしょ濡れなんですぅ。このままじゃ、頑丈な私でも風邪を引いちゃいますぅ」

人形「あら、まあ」

貧乏神「誰も住んでないと思って雨宿りに来ただけなんですぅ。盗みに入ったわけじゃないんですぅ。許してください〜」

人形「……ふーん、へぇー」

貧乏神の言葉を聞き、人形はどこか面白そうに瞳を細める。
そして人形は少しの間考えるように腕を組んでみせた後、貧乏神の上に積もったチェスの山から音もなく飛び降りた。

人形「ま、いいでしょ。とにかく着いてきなさい」

人形はふわりとスカートの裾を揺らし、重力を無視した動きで軽々と着地しながら、組んだ腕を解いて指を鳴らす。
すると貧乏神の上に積もっていたチェス駒たちが一斉に飛び上がり、貧乏神を拘束から解き放った。

貧乏神「……へ?」

人形の意図がわからず、貧乏神は床に這いつくばったまま目をぱちくりさせる。
対する人形は、そんな貧乏神の前まで悠然と歩み寄り、ゆっくりと腰を下げて右手を貧乏神の顔前に差し出した。

人形「私がいた暖炉の部屋に戻るのよ、服が濡れてるなら、まずは乾かさないといけないわ」

貧乏神「ゆ、許してくれるんですか!?」

貧乏神は少しだけ嬉しそうに声を上げた。
だが人形は何も言わず、ただ笑みだけを返して貧乏神に応えた。

人形「さ、行きましょう」

貧乏神「はい!」

許されたと解釈した貧乏神は立ち上がり、人形に手を引かれるまま、先ほど一緒に駆けた廊下を引き返し始めた。

……この時、一も二もなく逃げれば良かったと貧乏神が思うようになるのは、もう少し後のこと。


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